焔と渦巻く忍法帖 第十二話
「・・・らしい」
「え?」
「・・・あほらしいっつったんだよ」
もう我慢などしない、ひたすらに冷たく抑揚のない小さな声には何の感慨も同行者達に向けられてはいない。
「おいおい今度は何を・・・」
その声の異様さに気付かず、フェミ男スパッツはルークに近寄ろうとする。だが、その口からもう言葉が紡がれる事はなかった。
・・・異様な光景だった。導師だとか、アクゼリュス救援だとかそういう何か明らかに大事にしか聞こえない会話をしている一行。一人の朱髪の少年と他の面々との会話は明らかに険悪なもの、店の雰囲気を乱すような険悪さに私はカウンターから出て外でやってくれと言いたかった。
だが、終わりは唐突に訪れた。朱髪の少年が何かをボソッと言っているのを聞き耳を立てていると、金髪の青年が何やらなだめに入ろうとしていた、その瞬間だった。
「・・・えっ!?」
何が起きたのかはわからなかったが、何かが起こらなければあのような事は起こらない。私の目に映ったのは朱髪の少年以外の五人が突然前のめりに倒れていった。そして五人が五人ともほぼ同時に床に倒れ込むと、朱髪の少年はおもむろにこちらに近づいてきた。
「悪いな、見苦しいもん見せちまって」
少年の顔は凄まじいといっても過言ではない程に、いい笑顔であった。そしてそれと同時に私は理解した、今の異様な光景を生み出したのはこの少年だと。
「迷惑ついでに頼まれてくれねぇ?その分の迷惑料は払うから」
「な、なんですか?」
「こいつら、後1時間足らずで目覚めるからそれまでここに置いてやってくんねぇ?」
その少年の言葉に私は違和感を覚えた。こいつらと言う声にだけは一切の思い入れを感じる事が出来ない、だがそれ以降の声にはちゃんと少年らしい明るさを伴った声。それに不思議と自らに向けられる感情には親しみやすさと彼の素直な気持ちが伝わってきた。
「・・・えぇ、それは構いませんがあなたはどうするんです?」
逆らわないならば実害は別にない、迷惑料は払うと言っている。少年に感じた印象と、お金が入るという得を考えれば私に断る理由はなかった。
「あぁ、こいつらより先に行くから俺はこれで失礼するよ」
「・・・つかぬ事を伺いますが、お連れ様は置いて行かれるのですか?でしたら私にしわ寄せが来ますので伝言の一つでもお願いしたいのですが・・・」
・・・実際これは1番聞きたくはなかった。だが、このままでは私にこの倒れている五人から何か言われるのは確実。そう思っていると少年は最高の笑みと絶対零度の眼差しを同時に浮かべ、五人に視線だけ向けながら私に言い放った。
「いらねぇよ、言ったところで俺の言葉を理解出来るはずもねぇし」
まるで違う生き物を見る美しいまでの冷たい視線に、私は心底理解してしまった。嫌いなどという言葉一つでは表せない程に少年と五人の間柄は薄っぺらいものであったと。
「わかりました。じゃあ先に行ったとだけ伝えておきます」
この集団にこれ以上口だしをしても意味はない、私にはそんな権利も義理もない。故に私はもう何も言わず、少年の事を優先にすることにした。
「話が早くて助かるな~・・・んじゃこれ、迷惑料。後はよろしくお願いしま~す」
少年は私の言葉に、いきなり袋を取り出し私に渡すと、店を出ていった。袋ごと渡された物はやけにズッシリ重く、中身を確かめるとその中身は一万ガルド程あった。その迷惑料としてはやけに多過ぎる程の金額に、少年を呼び止めようと急いで外に出ると、少年の姿は既に辺りから消え去っていた。
「・・・なんなんだったんだ、一体・・・?」
嵐が過ぎ去った後のような印象、私の少年のイメージは率直に言えばそうだった。だが少年が残した物は大金という嵐ではありえない得だ。
その得に応じるべく、私は少年が嫌悪感を露骨に表す五人を隅へ片付けるべく店の中へ戻っていった。
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「え?」
「・・・あほらしいっつったんだよ」
もう我慢などしない、ひたすらに冷たく抑揚のない小さな声には何の感慨も同行者達に向けられてはいない。
「おいおい今度は何を・・・」
その声の異様さに気付かず、フェミ男スパッツはルークに近寄ろうとする。だが、その口からもう言葉が紡がれる事はなかった。
・・・異様な光景だった。導師だとか、アクゼリュス救援だとかそういう何か明らかに大事にしか聞こえない会話をしている一行。一人の朱髪の少年と他の面々との会話は明らかに険悪なもの、店の雰囲気を乱すような険悪さに私はカウンターから出て外でやってくれと言いたかった。
だが、終わりは唐突に訪れた。朱髪の少年が何かをボソッと言っているのを聞き耳を立てていると、金髪の青年が何やらなだめに入ろうとしていた、その瞬間だった。
「・・・えっ!?」
何が起きたのかはわからなかったが、何かが起こらなければあのような事は起こらない。私の目に映ったのは朱髪の少年以外の五人が突然前のめりに倒れていった。そして五人が五人ともほぼ同時に床に倒れ込むと、朱髪の少年はおもむろにこちらに近づいてきた。
「悪いな、見苦しいもん見せちまって」
少年の顔は凄まじいといっても過言ではない程に、いい笑顔であった。そしてそれと同時に私は理解した、今の異様な光景を生み出したのはこの少年だと。
「迷惑ついでに頼まれてくれねぇ?その分の迷惑料は払うから」
「な、なんですか?」
「こいつら、後1時間足らずで目覚めるからそれまでここに置いてやってくんねぇ?」
その少年の言葉に私は違和感を覚えた。こいつらと言う声にだけは一切の思い入れを感じる事が出来ない、だがそれ以降の声にはちゃんと少年らしい明るさを伴った声。それに不思議と自らに向けられる感情には親しみやすさと彼の素直な気持ちが伝わってきた。
「・・・えぇ、それは構いませんがあなたはどうするんです?」
逆らわないならば実害は別にない、迷惑料は払うと言っている。少年に感じた印象と、お金が入るという得を考えれば私に断る理由はなかった。
「あぁ、こいつらより先に行くから俺はこれで失礼するよ」
「・・・つかぬ事を伺いますが、お連れ様は置いて行かれるのですか?でしたら私にしわ寄せが来ますので伝言の一つでもお願いしたいのですが・・・」
・・・実際これは1番聞きたくはなかった。だが、このままでは私にこの倒れている五人から何か言われるのは確実。そう思っていると少年は最高の笑みと絶対零度の眼差しを同時に浮かべ、五人に視線だけ向けながら私に言い放った。
「いらねぇよ、言ったところで俺の言葉を理解出来るはずもねぇし」
まるで違う生き物を見る美しいまでの冷たい視線に、私は心底理解してしまった。嫌いなどという言葉一つでは表せない程に少年と五人の間柄は薄っぺらいものであったと。
「わかりました。じゃあ先に行ったとだけ伝えておきます」
この集団にこれ以上口だしをしても意味はない、私にはそんな権利も義理もない。故に私はもう何も言わず、少年の事を優先にすることにした。
「話が早くて助かるな~・・・んじゃこれ、迷惑料。後はよろしくお願いしま~す」
少年は私の言葉に、いきなり袋を取り出し私に渡すと、店を出ていった。袋ごと渡された物はやけにズッシリ重く、中身を確かめるとその中身は一万ガルド程あった。その迷惑料としてはやけに多過ぎる程の金額に、少年を呼び止めようと急いで外に出ると、少年の姿は既に辺りから消え去っていた。
「・・・なんなんだったんだ、一体・・・?」
嵐が過ぎ去った後のような印象、私の少年のイメージは率直に言えばそうだった。だが少年が残した物は大金という嵐ではありえない得だ。
その得に応じるべく、私は少年が嫌悪感を露骨に表す五人を隅へ片付けるべく店の中へ戻っていった。
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