焔と渦巻く忍法帖 第十二話

ぎらつく太陽に砂の感触が足に纏わり付く、ルーク一行は砂漠という地を猪思考姫とコウモリ娘を加えて歩いていた。

砂漠という地は暑く熱気が付き纏う地であるが、ルークと他の面々の間には真冬を思わせる程の温度差の隔たりが出来ている。



「・・・なんでルーク様、何も言わないの?」
「大方ナタリアが付いてくる事にまだ不満があるのでしょう。やれやれ、随分無駄に根を持つ方ですね」
「何もわかっていないわ、彼は」
「まあまあ、ルークもすぐに機嫌を直すさ。自分が悪いって気付いてな」
「全く、もう少し喜んだらどうですの!」



・・・後ろから聞こえてくる会話は一言一句たりとも遠慮などしていない、耳をすませて集中しなくてもルークにだだ漏れなことからそれはよくわかる。
(・・・餓鬼以下だな)
その会話をルークはただ一言で簡潔に感想をすませ、また少し価値観が違う者達との距離を空けながら砂漠の砂を踏み締める。
いくら気に食わないといっても露骨に声を出して人をおとしめるのは、人としての常識を疑う。フェミ男スパッツもフォローのつもりであろうが、初めからルークを悪役と決めつける時点で分かりあえないのは確定している。コウモリ娘はあの会話の後に「案外ガキ・・・あっ、子供っぽいんですね。ルーク様」と、最初見下して同調する声をルークは聞いた。見下した声を出すのは他との同調の証、そんな人物がルークとわかりあえるはずもない。
(・・・まーだ、まだ。我慢我慢)
一応まだこれでも限界は突破はしていない、ルークはそう自己暗示をかけながら自らへの悪口を意図的に無視してまたスピードをあげていった。








わかりあうには絶望的な距離が開き切ったルークと他の面々、そんな一行の前にオアシスが見えた。

オアシスでの休憩は砂漠を渡る者には必須、一行はオアシスに立ち寄り休息を取る事になった。



「・・・ふう」
オアシスの澄んだ水で喉を潤す、それは何物にもかえがたい清涼感を産む。任務で気候的にザオ砂漠に似た砂隠れの里にも何度か行っているルークは暑さに慣れてはいるが、水を飲むだけでこれだけの清涼感を得られるのはやはり砂漠特有の格別なもので、ルークもただの水に舌鼓を打つ。その顔には今までのイライラなどは見えず、純粋に旨いという気持ちで笑みを浮かべた。
「あの・・・よろしいですか?」
そんな清々しい表情になっていたルークの元になにやら何かありげな様子で男が歩みよってきた。
「ん?何?おっちゃん」
「ちょっと手紙を渡してくれと頼まれたんですが・・・その・・・あなたにやけにそっくりな人に」
「・・・は?」
そっくりなという部分にルークは嫌な予感を隠せず、清々しい表情から一転眉を歪める。
「『俺に姿だけ似た俺とは似ても似つかない屑が来たらこいつを渡せ!いいな!』・・・と言われてこの手紙を預けられました」
確実に煙デコだ、こんなに目の前の人物から不快感をあらわにされた言い方をされる人間はいないとルークは嫌々確認する。
「・・・ありがとうございます。この手紙は受け取らせていただきます・・・ご愁傷様でした」
あんな暴言の塊のような人物と一緒とは思われたくはない、ルークはその男性から手紙を丁寧な態度で受け取ると頭を下げてその場を離れていった。



「・・・すげぇこの手紙中を覗くのこえぇんだけど・・・」
少し離れた位置に陣取っていた同行者達の元に行くルーク。その顔は言葉の通り、あまり明るいと言えるような物ではない。
「ビリッて破いて捨てたいんだけど、相当・・・」
煙デコから来るものがラブレターであるはずがない。ろくでもない物でしかないとルークは思ってはいるが、それでもルークは手紙を破って捨てるという行動は取りはしない。そんなルークにはある思惑が産まれていた・・・





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