焔と渦巻く忍法帖 第十一話

「シンクが居て街の外に出られないのはわかった。けど俺が聞きたいのはなんで今ここにいるのかってことなんだけど?」
さっさと本音を言えよと顔を近づけ、気まずそうな顔をジーッと見つめる。流れとして言えば恐らくは自分がイオンを助けようと言い出すのを待っていたに違いないと、ルークは思っていた。
「ルーク、そんな事を一々気にしている状態じゃないだろ。追い掛けようぜ、イオンを」
「そうですねぇ、この場でぐずぐずルークの疑問を黙って聞いていたらイオン様が連れていかれます」
「そうよ、一刻も早くイオン様を保護するべきよ」
・・・だがルークの思いが他の三人に通じるはずもない。パァッと顔を思惑通りにいったと綻ばすコウモリ娘に対し、まんまと口車に乗りすぎている三人に失望というより軽蔑しかルークには浮かばなかった。



「・・・なぁ、アニス。イオンがさらわれた事を知っている奴はいないのか?他には。例えばモースとか・・・」
ここまで行けばもう多数決の原理で行かなければいけないと口をすっぱくして言って来るのは明らかで、質疑の矛先をルークは変えていく。
「・・・モース様に報告したんですけど、すっごく怒っちゃってました」
「ということは、モース様は六神将とは繋がっていない・・・?」
ここで必要なのは繋がりなどではないと思っているルークは修頭胸の言葉を無視して尚質問する。
「モースに報告したってんならどうするかも聞いたんだよな?モースはアニスにどうしろって言ってきたんだ?」
「えっ・・・えと・・・それは、お前の責任だからお前が導師を助けに行けって・・・」
後半は尻つぼみになって小さくなる声に本当に怒りを喰らったのだとルークは確認する。そしてルークは肩に置いていた手をようやくコウモリ娘から離し、三人に向き直る。






「なら別に俺らがイオンを助けに行く必要ないな」
「「「「・・・え?」」」」
ルークからのまさかの一言に、四人が四人呆気に取られる。その顔を見たルークは反論に応じて来る前に話し出す。
「だって俺らはキムラスカから導師イオンを探してくれなんて任受けてねぇし、アニスもモースからお前がって一人で行けって言われてんだ。それに俺らはアクゼリュスに向かう任を受けてんだ。障気に満ちて壊滅する危機に陥ってるって話だろ?下手に俺らが遅延するような行動取ったらアクゼリュス、本当に壊滅するんじゃねぇか?イオン助けに六神将追っかけて、あげくの果てにはイオンすらも助けられずアクゼリュス壊滅、なんて最悪なシナリオも全然考えられるぞ。そうなりゃどうなる?アクゼリュスに派遣された俺達は命じられてもいないイオンの身柄確保に努めていたため、アクゼリュス救出に失敗しましたって言えるか?そんなこと言えるはずもないだろ。イオンがさらわれたのは俺達の責任じゃないのになんでそっちに向かったんだって責任追求されて俺とガイはキムラスカから、ティアはダアトから、そしてジェイドはマルクトから処罰を受けるのは確実だぞ?アクゼリュス救出が和平の為の最低条件、キムラスカとマルクトからすれば和平失敗の原因でダアトは仲介の役目すら果たせずに終わったって見方になるんだぜ?俺ら。そうなりゃ歴史の大罪人として名を残して処罰、まぁ大罪を犯したら大底は死刑になるだろうな」
反論はおろか、驚愕の声すら許さないこの怒涛の語り口。一気に話された話ながらもわかりやすい話に、眼鏡狸は中盤から話を理解したのか眼鏡を押し上げるそぶりで顔を隠す。修頭胸とフェミ男スパッツは死刑という最後の下りでようやく理解したようで、顔を青くさせてうつむいた。
それを見たルークは最後の一人へとまた向き直る。
「そうなりゃアニス、お前は大任を命じられた人間を口八丁で連れていった大罪人になるぞ?お前がそういうつもりで言った言ってない関わらずな。そうすれば失敗に失敗を重ねた事で俺ら以上の汚名被って処罰されるぜ?」
今までの流れを聞いていて自分にとっても危うい立場であると理解したのだろう、コウモリ娘はただ下を向いてうつむいてしまった。それを見たルークは一層底冷えする声で三人に言い放った。



「俺らは行かない、でいいよな?」
後ろを向いたままのルークの言葉にここまで来れば反論はおろか肯定の一言すら出てこない、三人はただ黙って頷くばかりであった。



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