焔と渦巻く忍法帖 第十一話

「今までその力を狙う者から守るため、やむなく軟禁生活を強いていたが今こそ英雄となる時なのだ」
(胡散臭っ、今更何えらそーに人を軟禁する理由を正当化しようとしてんだよ。おい)
合っているのは前半だけ、後半は英雄などという聞こえのいい言葉で自らのやったことを公爵はうやむやにしている。
(どんなに大義名分並べたって、息子を閉じ込める事はやり過ぎなんだよ。逃がさねぇ為なら外に行くくらい護衛くらい増やせばいいことだろ、そんなこともさせもしねぇくらいガチガチに固めりゃ不等拘束で訴える事も普通なら可能だぞ・・・あー、結局預言通りに事を進ませる為にやらなきゃいけない事だったってのを知らされてすらいなかった奴がえらそーに)
ルーク、いや正しくは煙デコの末路すら聞かされていなかったのに預言というだけで息子を軟禁までするような人物の言葉など心に響くはずもない。上辺だけを取り繕った言い分はルークの呆れと失望に尚拍車をかけていた。



「英雄ねぇ・・・」
すると後ろに位置していた眼鏡狸が若干どうだかなといった感じに呟く。
(胡散臭いって思うのはわからないでもないけど、声と態度にあからさまに出してんじゃねぇよ。おい)
声は小さめではあるが、確かに聞こうと思えば聞き取れる距離。いかに話が胡散臭かろうと、和平に向けて話し合っているこの状況で露骨に敵国であった人物が雰囲気を乱すような事を言えば和平は無駄になるだろう。
(マルクトもなんでこんなふざけたやつを名代に・・・っていうかこいつで最高の礼儀だっていうならマルクトも最悪だろ)
「何か?カーティス大佐」
そうルークが考えていると、アルバインがやはりそれに気付いたようで眼鏡狸に話を振る。
「・・・いえ、それでは同行者は私と誰になりましょう?」
(まずいと思ったんなら、口に出してんじゃねぇっつーの。明らかな話題変更はまずいと気付いた証だろーが)
そうルークが思っていると、不敬師匠が口を開く。
「ローレライ教団としてはティアとヴァンを同行させたいと存じます」
そしてそれに続いて公爵が口を開く。
「ルーク。おまえは誰を連れて行きたい?おおそうだ。ガイを世話係に連れていくといい」
「・・・かしこまりました。では、アクゼリュスに向かうのは私とヴァン謡将、ティア・グランツ饗長とガイ・セシル、そしてジェイド・カーティス大佐でよろしいのでしょうか?」
どうせ自分には選択権はない、それは公爵がフェミ男スパッツを有無を言わさずに存在を押した事でよく理解していた。
(まぁ、当然だよな)



(だって老け髭以外は事実上の死で終わらせる気で満々なんだし)



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