焔と渦巻く忍法帖 第十一話

「では話を開始いたします。・・・昨夜緊急議会が招集されマルクト帝国と和平を締結することで合意しました」
「親書には・・・」
アルバインから始まった話をルークは静かに聞いているように見える。しかしルークは実際は全く真面目に聞いていない。
(あー、早くナルトの所に行きてぇなー)
ご大層な説明など、ナルトから聞いた真実を耳にしたルークからすれば無駄な時間。ただひたすらにアクゼリュスの現状を聞くだけなどというのは退屈極まりなかった。



「そこで陛下はありがたくもおまえをキムラスカ・ランバルディアの親善大使としてアクゼリュス救援の役目を任命されたのだ」
そこそこに話を受け流しながら聞いていると、ファブレ公爵が肝心な単語を口に出してきた。それを受けたルークはまた丁寧に頭を下げる。
「かしこまりました、陛下。アクゼリュス救援の任、慎んで承ります」
あっさりと、そして厳かに。会話を交わすことすら面倒になっているという内心の状態を微塵も出さず、簡潔に返事を返した。
「うむ、よく決心してくれた。実はな、この役目。おまえでなければならない意味があるのだ」
「・・・失礼を承知でお聞きいたしますが、どういう意味なのでしょうか?」
本当は意味は知ってはいるが、知っていては話がおかしくなるので知らないふりをする。
「この譜石をごらん。これは我が国の領土に降ったユリア・ジュエの第六譜石の一部だ」
「ティアよ、この譜石の下の方に記された預言を読んでみなさい」
「・・・はい」
陛下からの言葉にどことなく間を空けて修頭胸が返事を返して譜石を受け取る。しかしルークは預言を詠み出した修頭胸の言葉には耳を傾けてはいない。いや、正しくは修頭胸の詠んでいる中身にルークは興味を持っていない。あの譜石の結末部分を気にしていた。
「・・・鉱山の町へと向かう。そこで・・・この先は欠けています」
(やっぱな、そこで切らすよなー)
実際はまだ先があるのをナルトが聞いて来ている。だが、その先が欠けているのはまた理由がある。
(ナルトの説明通りだな)
それは昨日のナルトとの会話の最中の事だった。不敬師匠と陛下と公爵の三人の会話をナルトは影分身で綺麗に再現してくれた。今の不自然な途切れ方の預言を併せて思い出した場面はこういう感じである。



「・・・ルークはヴァンを引き合いに出せばアクゼリュスに行くでしょう」
「だが、問題は死霊使いだ。下手な言い方をすれば預言を達成することが難しくなるぞ」
「心配はいりませんぞ、お二方。この譜石はマルクトには不利な事は読めぬよう、先に都合のいい場所で譜石を折っておきました」



(つっても都合良すぎだろ、この預言の途切れ方はよ・・・)
見方によれば確かにマルクトにもルークがアクゼリュスに行けば繁栄が訪れるように感じられる。しかし少し考えれば預言の事を知ってる知らない関係なしにこれが胡散臭い物だと思えるだろう。
(あんだけ預言に固執してんだから、これが本当に両国の繁栄詠まれてんだったら普通にこっちの和平方面に最初から尽力するだろ)
不敬師匠はダアト所属の人間、もし本当にキムラスカがこの譜石を最初から持っていたなら確実にキムラスカsideからこの話が自分達より先に不敬師匠にされるはず。キムラスカからすれば繁栄のために必要なのはアクゼリュスに行くためのマルクトとの和平が必要だと判断する、そうすれば一目散に和平方面にまっしぐらな行動を取るはず、そう見ていけば不敬師匠の行動は明らかにおかしい。
(裏があるのは知ってても知らなくても明らかだろ)
少し疑えばぽろぽろ出て来る、これならナルトが調べてこなくても変だと気付いたとルークは思った。




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