焔と渦巻く忍法帖 第十話

ルークが不敬に対する動きにヤキモキしているその頃、ナルト側にようやく動きが見えて来た。



「大詠師モース殿、陛下はご自身の部屋で待つとのことです」
愚痴をまだ愚痴愚痴続けていたモースのいる部屋に、兵士が用意が調ったとつげに来た。
「そうか・・・では行くか」
その兵士に労いの言葉をかけるでもなく、さも当然のようにモースは兵士に一瞥もくれずに部屋を出ようとする。
(やっぱり最低だってばよ)
自分は預言のために動いているのだから敬われて当然、そういう心情がありありと見てとれる態度。ここはダアトではない、キムラスカだ。ダアトならそれでいいだろうが、他国でもその態度を貫いていいはずもない。現に兵士はモースの態度に不満を隠しているかのように、敬礼を返すときに気配の揺らめきを感じさせて退出していった。
(ここはおまえの国じゃないってばよー)
そう思いながら、ナルトもモースの部屋をでるときの動きに合わせてまた部屋を出ていった。






ナルトが天井に張り付きながらやたら早足のモースの後を付いていくと、ある一室の前にモースが立ち止まる。ここが陛下の部屋だとナルトが思っていると、部屋の扉の前の兵士がモースに話しかけてきた。
「ただいまファブレ公爵が陛下と話されております。もう少しで終わりますので少々お待ちください」
「何?ファブレ公爵が?・・・わかった、待とう」
兵士から告げられた名前に、こういうとき絶対に文句を言うだろうモースは何か少し考え込んだ後、待つ体勢に入った。



それから一分強程も待つと、部屋の扉が開いた。
「・・・おぉ大詠師殿」
扉から現れたのはファブレ公爵、公爵はモースの姿を見ると会釈程度の言葉と挨拶を交わして先に行こうとしている様子だ。
「・・・公爵、よろしいか?」
たいするモースはなにか重要な話があると言わんばかりに切り出してきた。その雰囲気に、公爵は何事かという様子ながらもモースと向かい合う。
「どうなされた?」
「公爵、もう一度私と共に陛下と会っていただきたい」
「・・・何故ですか?」
公爵の疑問の声に、モースは兵士に聞こえないよう公爵に少し近づいて小声で答える。



「ご子息の事です」



そのモースの声は確かにナルトの耳に入った。五感を鍛えているナルトからすればあれくらい盗み聞ける。確かにその言葉を聞いたナルトの視線の先には、動揺をあらわにしている公爵の姿があった。
「・・・わかりました、ご一緒しよう」
少し間を開けた後、公爵はモースの申し出に同意をする。
(・・・ここからは聞き逃せないってばよ)
公爵の動揺から見ても、何かルークに関係することにも間違いない。そう思いナルトはまた部屋に気付かれないように先に忍び込んだ。



「失礼致します、陛下」
「うむ・・・して、何故クリムゾンはまたここに来たのだ?」
入室して挨拶をするモースの隣にいる公爵を見て、陛下は公爵に問う。
「それは大詠師モースがルークの事で話があるとのことでしたので、私も一緒にと・・・」
「・・・ルーク?もしや預言の事で何かわかったというのか、モースよ?」
次の言葉がモースから出て来る瞬間、それがモースの切り札であるとナルトは感じた。そしてモースから告げられた言葉は、三人の予想を超えたものだった。



「結論から申し上げます。ルーク様は預言により、死ななければなりません」





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