焔と渦巻く忍法帖 第十話

ナルトがモースの様子を見ているその頃、ルークはようやく公爵邸に戻ってきていた。しかし、やはりルークの予想通り、後ろには余計なものまでついてきている。
(入っていいのはイオンとフェミ男スパッツくらいだろ。身分で対等なイオンは来たいって言ってるから招かねぇと失礼にあたるし、使用人のフェミ男スパッツはここで働いてる訳だから入っても仕方ない・・・けれどこいつらは招いてねぇ、俺は一言も来いなんて言ってねぇぞ。眼鏡狸、てめぇは和平が結ばれるからって簡単にその国の貴族の屋敷に『和平を結ぶのだから来ても問題ない』と言わんばかりに普通に入って来てんじゃねぇよ。そこは身分の差と元敵国の間柄の気まずさを考えて『私はこれで』と消えておけよ。コウモリ娘もダアトから来てるって言ってもお前も身分の差は明らか、もしイオンの護衛の為って言ってもイオンは客人だ。もしキムラスカが客人を襲うような傍若無人な国ならとっくの昔に潰れてる。そんな礼儀しらずな国じゃねぇんだからてめぇも礼儀をわきまえて入口で待つくらいですませておけよ。最後に修頭胸・・・お前が一番おかしい!!屋敷の門をくぐれば見送った事になんだろ!!何屋敷の中にまで入って来ようとしてんだよ!!家の中にまで入らなきゃ見送った事にはなんねぇのかよ!!)
城の中にも平気で入ったことから、このような展開も簡単に想像出来た。だが・・・
(今更・・・本当に今更だけどこいつらの普通ってどこまで俺らと感覚がズレてんだ・・・まだキムラスカの軍人達はすげぇ普通なのに・・・)
どこをどうすればここまで面の皮が厚いやつらになるのか、ダアトとマルクトの兵士教育を疑うルークの疑問は尽きる事はなかった。



門をくぐり、ドアを開けた瞬間、ルークは屋敷内の気配の異常とも言える変化を感じとった。
(・・・当然か。やっぱりこうなると思ってたし、気の毒だから後でラムダスから聞いておこう)
屋敷に戻って来たときにこうなってるだろうと自分の予想が的中したため、ルークは後で行動を起こそうと決める。



そんなことを思っていると、ドアを開けたルークの目に入ってきたのはファブレ公爵と先程港で会ったばかりのセシル少将のツーショットだ。それを見たルークは後ろの礼儀しらず達のあてつけにとわざとらしく見えないように、わざとらしく丁寧に頭を下げる。
「ルーク・フォン・ファブレ、只今戻りました」
「う、うむ・・・」
いきなりのルークの丁寧な対応にファブレ公爵は若干戸惑いながらも、返事を返す。まぁ、公爵の前でここまで丁寧な態度をとった事はないので、この反応も当然だとルークは思った。
「報告はセシル少将から受けた。無事で何よりだ」
だがそこは貴族、威厳を持った対応で気を取り直してこちらに接してくる。
「ご心配をおかけしました」
「ところでルーク、ヴァン謡将は?」
老け髭の名前が出てきた事で、ルークはさりげなしに毒をおり混ぜた言葉を放つ。その毒の対象は・・・
「ヴァン謡将でしたら六神将のアッシュが起こしたカイツールの港襲撃事件の後始末をしてから来られると、ケセドニアで分かれました。私達の後から来られるとおっしゃっていましたので、少なくとも数日の内にはバチカルに到着するかと思われます」
煙デコ。小さな事からコツコツと、ちょっとづつでもいいからとルークは煙デコとダアトの心象をさげようと言葉を選ぶ。
「・・・港のアルマンダイン伯爵から報告は受けたが、それは真なのか?ルーク」
カイツールの単語を聞いて少し声を落とす公爵。憤りは感じているのだと思ったルークは後押しをする。
「はい、ヴァン謡将もそれを認めていました」
「・・・そうか」
「我がしもべの不手際・・・お許し下さい」
そこにイオンが申し訳なさそうに会話に入る。
「・・・ルークが進言したと一応聞いてはいますがダアトからの損害賠償とアッシュの厳正な処罰。きっちり行ってもらいますぞ」
「・・・はい」
公爵の不機嫌さがわかる声色に、イオンがうなだれながらも返事を返す。上々の成果だと、ルークは内心満足した。





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