焔と渦巻く忍法帖 第十話

「ルーク、お前あんな言葉遣い出来たのか?」
足取りも重く謁見の間から出ると、すぐにルークにフェミ男スパッツが話しかけてきた。
「こう言っちゃなんだが、お前がああいう風に喋れるなんて意外だったぞ」
余程普段のイメージが定着しているのか、周りの面々もウンウンと納得している。しかしその頷く行動自体が不敬に値するというのが何故このメンバーは分からないのか。
「俺は貴族だ、言葉遣いくらい心得ていてもおかしくねぇだろ」
そういうとプイッと前を向いて話を避けるルーク。
「おいおい、俺が言いたいのはそういう事じゃなくてな・・・」
フェミ男スパッツがルークの前に顔を出し、尚も会話を続けようとしてくる。
「話は後ででいいだろ、ここは城の中だぞ。あんまり声を出すと見苦しいぞ」
声量はおさえめにしてあるが、こちらでの普段の態度のように怒りを露にするルーク。
「あ、ああ・・・」
それに引きつりながらも仕方ないように引き下がるフェミ男スパッツ。
だが実際城のような厳正な場所で、私語を大きな声で話すなど無作法もいいところだ。フェミ男スパッツ達からすれば自分達は客なのだから構わないと思っているのだろうが、いかんせん話の内容も態度もあまりにも拙い。
(主の品位を貶めてどうすんだよ、フェミ男スパッツ。城には兵士もメイドもいんだぜ、自分の主は態度酷いですよって言ってるようなもんじゃねーか。それに頷くな、そこ。むしろ態度を改めるところだろ)
普通あそこまで変わる姿を見れば敬意くらい払うだろう。しかし、明らかに少しはマシな一面もあったんだというニュアンスしか同行者からは感じられない。
(・・・なんで学ばねぇのかな、こいつら・・・)
どう考えてもここまできたら自分の方が上だと気付くはず、そんなことを思いながらルークは城の廊下を歩いていった。






一方そのころ、ナルトは城の中のモースにあてがわれた部屋に来ていた。
「そこの兵士、至急陛下に内密に話が出来るような環境で話せるように申し出ろ。これは重要な事だ」
部屋の前に来たモースは近くにいた兵士に我がもの顔で命令を押し付ける。
「・・・はっ」
その兵士もこのような言われかたをする言われはないと思っていたのか、若干間を空けて返事を返してその場を後にした。
その様子を見届けるとモースは苛立ちが分かるように部屋の扉を乱暴に開ける。その瞬間、ナルトは扉を開け放った勢いに合わせて凄まじいスピードで部屋の中へと忍び込んでいった。普通の人間や並の中忍クラスくらいの忍ならこの一瞬で誰にも気付かせないように入り込む事は出来ないが、ナルトの速さは例えるべきものではないほど早い。更にそのスピードに加え極限まで無駄を省いた動作のおかげで、空気抵抗で出る風すら全くと言って言い程ない。モースごときに悟らせない事など、ナルトからすればなんら訳のないことだった。
モースに気付かせないまま部屋の片隅に位置したナルトは入ってきたモースの様子をチエックする。
「ええい、くそ!!忌々しい!!あのまま行けば簡単にキムラスカとマルクトを戦争に持っていけたものを・・・!!」
扉を閉めて開口一番に怒声を部屋に響かせるモース。城なので防音設備は整ってはいるだろうが、もし聞かれたらどうするのかという問題発言を簡単に口にするのはどうだろうか。
「・・・出来れば秘預言は口にしたくはなかったのだがな・・・」
(秘預言・・・?名前からして重要だってばよ)
モースの様子から察するに、その秘預言が切札なのが想像出来る。
「忌々しい・・・ルークめ・・・私の計画を・・・」
(なら・・・陛下に会う時の様子を見る方が重要だってばよ)
既にモースは愚痴モードに入りつつあるため情報を獲られないと思ったナルトは、次に問題になりつつある陛下への秘密謁見の時間を静かには待つことにした。




9/17ページ
スキ