焔と渦巻く忍法帖 第十話

「御前を失礼しました、陛下。時間を取りました事を慎んでお詫び致します」
一先ずモースをいじる事は後回しにして、陛下に向き直り丁寧に頭を下げるルーク。
「いや、構わん。こうして親書が届けられたのだ。戦争を起こすような誤解を解こうとするのは当然だ。気にしてはおらん」
「陛下の寛大なお心に感謝します」
「さて皆の者、長旅ご苦労であった。まずはゆっくりと疲れを癒されよ」
「使者の方々のご部屋を城内に用意しています。よろしければご案内しますが・・・」
「もしよければ僕はルークのお屋敷を拝見したいです」
そのイオンの言葉に、ルークの気配に些細な揺らめきが現れたのをナルトが感じとる。
(これからの流れが簡単に予想出来るってばよ)
今までの経験上で絶対にイオンだけではなく余計なものまでついてくる、ナルトは普通にそう予測出来たためにルークもそう予測することが出来る。今から来る自分への心労を考えて疲れるとルークが思ったから気配がぶれたのだと、ナルトは心中を察した。
「ティアは残りなさい。例の件、おまえから報告を受けねばならぬ」
そこにモースから修頭胸への呼び出しがかかる。
「モース様、私にはルークをお屋敷に送り届ける義務がございます」
その修頭胸の場所を全く考えていない発言に、またルークの気配に揺らめきをナルトは感じとる。しかし今度は先程より大きく揺らいでいる。
(うわー、上司も上司なら部下も部下だってばよ)
ルークがキムラスカの一臣下で王の前で発言を許される身分、それはすなわち一兵士とは身分は比べ物にならないということ。更にはこの場はバチカルの謁見の間で王の御前、何故簡単にルークを呼び捨てにしてキムラスカの品位を落とす発言をしているのか。
それにモースは王の前でバチカルに関係ないダアトでの修頭胸に任せたであろう仕事に関する事を平気で持ち出している。何も今この瞬間に持ち出す必要はないだろう。実際に王と限っただけの事ではないが、目上の立場になる人物の前でその人物を考えていない態度はあまりに常識がないと言えるだろう。
「・・・よかろう、それでは陛下。私はここで失礼します」
修頭胸の言葉に明らかに不満げな様子で返し、モースは陛下に挨拶を交すとルークを忌々しげな目でチラッと見てその場を去っていった。
(うーわ、最低~。身分どうこうより、人としてなってない態度だってばよ)
恨みがあると言わんばかりの目を隠そうともせずににらみつけるのは、当人同士の間に遺恨を残す。身分という事を考えなくても、人間として未熟という他にならない。
(この様子じゃまた何か仕掛けようとするってばよ。なら俺がやることはただ一つ・・・)
思い立ったが吉と、ナルトはモースが扉から出ようとした矢先に目にも映らない早さで、扉の上の方から謁見の間を出ていった。






(・・・ナルトはモースの方に行ったか・・・)
ナルトが出ていった気配を感じとったルークは理由を結論に持っていく。
(こういう時、ナルトの行動って早いんだよな~)
ルークもモースの性格と行動から、自分の思う理想の方向へと早く軌道修正するために手を打ってくるだろうと考えていた。ルーク一人でここにいたならば影分身をモースにつけて行動を探らせていただろう。
(ナルトに任せりゃいいな、モースは)
そんなことを考えていると、陛下がルークへと話かけてきた。
「ルークよ、実は我が妹シュザンヌが倒れたのだ」
「母上が・・・!?」
驚く様子を見せながらも、内心では納得するルーク。シュザンヌは精神的に弱い部類に入る人物、ルークの見立てでは‘ルーク’がいなくなればそのショックで倒れるのも当然だと思っていた。
「わしの名代としてナタリアを見舞いにやっている。よろしく頼むぞ」
「・・・はっ」
ナタリアという単語を聞き、ルークは内心でやる気を無くしながらも返事をりんとしながら返す。
(・・・やめろよ、あんな勘違い女に会わなきゃいけない状況に立たすのは)
これで心労は何割増しかは決定だと、ルークは出口へと向き直り重い足取りで出口へと向かっていった。




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