あるべき形とは何かを見失う者達と見定める者達

・・・そうして目暮が新一の為にもと四苦八苦する中で新一の解決した事件の後片付けを済ませた警察の車は警視庁へと戻ったが、その後で一人の鑑識が特命係へと向かった。






「・・・失礼します」
「おう、米沢。どうだった?」
「やはり目暮警部は工藤君に協力したいと思っているようです。事件現場の片付けをしている最中で二人でどうにか工藤君が事件解決の為に動けないか・・・特に特命係を介さずにやれないかと工藤君は強く願っているという話をしていました」
「ハッ、随分と仲がいいこった。そしてそれをどうにかしたいって目暮警部は思ってるってことか」
「えぇ。伊丹警部は気に入らないかもしれませんが、あの様子ではとても目暮警部は工藤君と前のようにやることを諦めきれないでしょうな」
「フン、もうあの人の事なんざどうだっちゃいい。昔からの付き合いだ何だという気持ちからなんだろうが、一般人を平気で頼るばかりかむしろ仲間だと言わんばかりの態度を改められないような人なんざな」
・・・組対五課の隣に作られた十人程は座れるデスクの設置された特命係の部屋にて。
そこに現れた鑑識の服を着た米沢に伊丹はどうかと投げ掛けるのだが、そこから返された答えに伊丹は隠しもしない不機嫌さを滲ませつつ目暮への悪態を口にした。以前から目暮の事を気に食わなかったというよう。






・・・伊丹は今は特命係に所属という立ち位置にいるが、以前は捜査一課にいた。そしてその時からの事として伊丹は目暮とは最悪と言っても差し支えの無い関係であった。主に新一に対しての姿勢やら考え方の違いからだ。

伊丹としては新一は事件を解決出来る能力だけならあることは認めはするが、探偵と名乗っているだけでまだ高校すら卒業もしていない未成年で探偵に未就業という一般人の存在だから、事件現場に入れさせるべきじゃないだろうという気持ちを強く持っている。だが目暮は先に出たように事件を解決出来るならだとか昔からの関係だとかで、年齢だとか見栄なんか一切気にした様子もなく新一を探偵として頼る事に躊躇しない・・・こんな二人が仲良くなるなど土台無理な話なのは誰の目から見ても明らかだった。

現に捜査一課に伊丹がいた頃には目暮と新一を軽々しく事件現場に呼ぶことについての話題で、激しく言い合いになったことがあったのだ。事件現場に一般人を入れるな、事件解決の為に最善を尽くすには新一君の力は必要だというような言い合いがだ。ただその言い合いに関しては周りの仲裁により中断されたが、以降も伊丹が特命係に移るまでは目暮とはちょこちょこと嫌味やら皮肉やらの言い合いだとか、視線で火花を散らすような事は少なくなかった。

だが伊丹が特命係に入ってからは明確に目暮との関係は変わったのである。距離的に目暮と顔を合わせることがあまり無くなったこともあるが、警察内に推理が出来て事件の解決が出来る存在として現れた杉下の存在があってだ。






「僕は伊丹さん程は目暮警部にどうこうという気持ちはありませんが、工藤君と共に事件解決をしたいという気持ちには賛成出来ないということには同意させてもらいます」
「これは杉下警視」
そんな伊丹の声に脇のデスクの椅子に座っていた杉下も同意だと声を上げ、米沢はその声に杉下へと視線を向ける。
「話は聞いていましたが、やはり目暮警部は工藤君に対する気持ちは変わっていないという様子らしいですね」
「はい。おそらくそういった気持ちは余程の事が無ければ変わらないでしょうし、目暮警部だけでなくそこに所属している班の面々も似たような方々ばかり・・・何だかんだで工藤君の人柄に触れてきた人達としてはその能力もあって、彼に事件を解決してもらうのが収まりがいいと思うようになったんでしょうな」
「そうですか・・・出来ることなら考えを改めてもらいたかった物ですがねぇ・・・」
「無理強いはよくありませんよ、警視殿。というか今の警視庁の様子を知っててそうだってんですから、誰かが何か言えばそれですぐに変わるってんなら世話はありません」
「・・・確かに無理強いは出来ませんし、言葉一つで変わるようなら世話はありませんか」
そうして杉下も会話に加わる形で話をしていくのだが、伊丹が目暮が変わらないことを吐き捨てるように漏らした声にゆっくり首を横に振った。人がそう簡単に変わる事がない実例を示されたことに。









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