あるべき形とは何かを見失う者達と見定める者達

「だから済まないがこちらとしては新一君の為にも連絡をしたいとは思っているんだが、そうするように先に特命係に連絡が行ってしまうんだ。そしてそれで特命係が事件解決をする事で上の立場の人達もそうだが、その事件の際にどんなトリックが用いられたかやその解き方の考え方などを教えていく事から、下の立場の者達も概ねが特命係の事を好意的に見ていってるらしい」
「そ、それは・・・な、何でそんな風になるんですか・・・?」
「やはり多発するトリックを用いられた事件を解決したり教えてくれる事にありがたいと思っている部分が大きいのだと思う。何だかんだで警察の中でも自分達の力で事件を解決したいと思っている者も多く、特命係の噂を聞いて短期でもいいから警視庁に教えをもらうために出向出来ないかと言い出す者も出て来ているらしいんだ」
「っ・・・」
だから無理・・・そう言う目暮が更に今の特命係の影響が強い事を示すエピソードも複雑そうに話すと、新一は苦い様子を浮かべて歯を噛み締めるしかなかった。






・・・ここで新一は言葉にしていないが決して明るい表情を浮かべていない理由は、流石にそんなことを言えばいくらなんでも目暮にどうかと言われることは承知だから黙りはするが・・・そうして警察が特命係の指導の元で事件を解決出来るようになったとしたら、自分という探偵の出番が無くなるのではないかという危惧を感じたからであった。

特命係が出てくるまでは新一の事を事件解決の為にと目暮達が事件現場に呼ぶことは普通であり、マスコミにも顔が中学生で探偵ということで注目が集まっていることもあって、新一は自分が探偵として有名だったり有能だというように見られている事に非常に満足していた。そして事件に関わって推理をして事件を解決出来ることにもだ。

だが特命係が現れてからは新一が事件現場に呼ばれることが無くなったこともそうだが、推理が出来るようにと教えるようにしていると聞いた時・・・新一としてはハッキリとは心の内で言葉にはしていないものの、実際には警察が有能になることについてを避けたいというように感じていた。というよりは自分が有能であると示す為には警察が有能になったなら、それが出来なくなるという危惧すら抱いたのだ。

・・・推理物の創作系の中では基本的に探偵を引き立てる為に警察が役立たずというか無能に描かれる事がセオリーとして多く、新一もそういったようなムーブを取ることが多い警察というか目暮達についてその人格もあって心地良い関係だと感じていた。重ね重ね何度も言うが新一自身は言葉にしたようなことはないが、それでも事件を解決出来ない為に自分を頼りにしてくれる都合のいい存在なのだと。

だから警察が有能になる事は本来なら望ましいことなのだが、新一は本心の所ではハッキリとそんなことにならないでほしいと思ったのである。もし本当にそうなってしまえば探偵である自分が必要ならなくなるのではないかという危惧もそうだが、それ以上に自分が事件に関われなくなるのではないかという実際は推理が出来る事件に出会うことを望んでいるが故の身勝手な気持ちから・・・










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