あるべき形とは何かを見失う者達と見定める者達

「えぇ。ただここで厄介なのは一応伊丹警部達から目暮警部達に知り合いなんだからということや警察の人間ではない未成年だからということで、色々と含みを入れた上でマスコミへの顔出しをしないようにというのもだが発言はある程度控えるように伝えてくれと言ったらしいのですが・・・それは効果が薄かったというか意味がなかったから今の結果だというのは官房長もお分かりだと思います」
「だろうね。というかマスコミがそんな時に遠慮なんてするわけないから、そもそもマスコミの前に顔を出して話すこと自体止めなきゃ意味がないだろ。彼らの仕事の事を考えると関係無い人の名前を出さない程度の配慮なんか軽々しく突破するだろうし」
それで更に続ける杉下の言葉に対し、小野田もすぐに理解を示したというように頷く・・・官房長としての立ち位置にいる小野田はマスコミにしつこく追求されずに逃げれる権力の行使が出来るから鬱陶しく思ってもどうにか出来るのだが、そういった権力を持たない者達に対してはしつこいなんて物ではないのは知っているために。
「その辺りの事については僕もどうかと思いますが、彼も彼で話を聞いた筈なのにそういった事を気にしていないということを僕はどうかと思っています。工藤君くらいならまだ中学生とは言えそういった機微くらいは分かっているだろうと思えるからこそです」
「その辺りはまだ何だかんだで子どもということだったり、自分の関与しない所で起きたことについてだから何かあってもそれが耳に入ってこずにいただとかって所だろうが・・・まぁそこはとにかくとして、お前からしたらそういった工藤君の様子はあまり良くないと感じたということか」
「えぇ。ですから官房長の言われるような形で特命係を発足するというのでしたら僕も微力ながら力添えしたいと思いましたが、最後に一つだけよろしいですか?」
「うん、なんだい?」
そうしてマスコミに言及しつつも新一に対して気持ち良くないといった旨を話すと共に特命係発足に前向きに動く・・・と杉下が言う前に指を一本立てて聞きたいことがあるとの事に先を促す。
「官房長は最終的に工藤君の事をどのようにしようと考えているのでしょうか?工藤君と敵対関係でも友好的な関係を築くでもなくというようにと言われたことから、官房長がどのようにしたいのかということが気になりましたからその事をお聞きしたいのですが」
「そこに関しては目暮警部達のような存在の抑制をした上で工藤君への協力要請がかからないようにすることを徹底した上で、彼を事件現場に容易に立ち入らせないようにするくらいで済ませるつもりさ。僕としては工藤君が事件を解決するだけなら別に構いはしないんだが、内村君や大河内君のような人達も出て来ている以上は警察が割れるという事態は避けたいと思ってね・・・だがならそれで完全に工藤君の事をどうにかしないのは何故かと言われれば、目暮警部達に呼び出されたからとかじゃなく第一発見者だとか現場に居合わせたなんてことも多々あるばかりか、状況としては警察が介入する事の出来ない場所にいるだとか警察が来る前に事件を解決していたなんて事も珍しくないんだよ」
「成程・・・そういった彼の巡り合わせの事を考えると事件現場に彼がいたからで無条件に除け者にするだったり、既に事件を解決したのにそれらを非難するようなことは望まれないと官房長は考えた訳ですか」
「そういうことさ。特に事件を解決したのに非難したとなったら警察に対して厳しい事をマスコミが言ってくる可能性も無いとは言えないし、そうなったら警察内の空気はいっそ工藤君の活動を全面的に認めないといけないといった雰囲気になる可能性は高いし、目暮警部達もまたどうかといったような行動に出る可能性もある。だから表面的には何も起こっていないとしつつも工藤君とは一定の距離を保ちつつ、その上で警察内の空気を変えていってほしいと思っているんだ・・・新たな特命係を持っての形でね」
そこから杉下が新一に対してどうなのかというように小野田に問い掛けるのだが、一言では言い表せない話を持って返すその口元には確かな笑みが浮かんでいた。それを変えられるのは杉下がいるから出来ることだと疑っていない様子で。









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