あるべき形とは何かを見失う者達と見定める者達

「そういう訳だから特命係を再び起ち上げるためにも、後はお前が頷いてくれればすぐにその準備に移ると言いたい所だが・・・お前としては工藤君の事をどう思っているんだ、杉下?」
「僕がどう思っているか、ですか・・・」
「今回特命係を設立するに辺り工藤君と敵対するとは言わないが、かといって友好的な関係を築くようなことをされるのは僕としては避けたいんだ。元々の目的が目的だからね。だからお前が工藤君の人となりや活動の仕方といったものを肯定するだったり、推奨したいといった気持ちだったら特命係の設立について少し考え直さないといけなくなるからさ・・・それで、どうだい?」
だから特命係を設立する・・・とする前に新一についてをどう考えているのかとその質問の意図も含めて問い掛ける小野田に、杉下は少し目を閉じた後で目と共に口を開く。
「・・・率直な気持ちをお話するなら、僕としても工藤君の事はあまりよろしくないというように思っています」
「ほう、それはどうしてだい?」
「彼に事件を解決したいという気持ちがあることは確かなのでしょうし、優作氏からの教えからか大人顔負けの推理力があることは解決した事件のファイルからも伝わってきます・・・ですが彼は一般人、それも未成年という立場にいる子どもです。そしてそういった子どもらしさについてをマスコミが彼を取材し、取り上げる姿を見たり聞いたりする度に僕は感じていました。言ってしまうならば自分は大人でも解決出来ない難しい事件を解決したんだ、自分は凄いんだぞという子どもそのままな気持ちをです」
「あぁ、確かにそう言われてみるとあの顔はそういったように見えるかも。事件の解決は自分の手柄だと誇っているようにね」
「えぇ。ですがそうしたように振る舞い事件の事を事細かに話していく彼は考えていないと思われます・・・事件にただ居合わせたくらいの人達、それも顔や名前といった物を知られたくないといった人達の事についてを」
「あぁ、確かにそういえばそういうことも聞いたことあるよ。詳しい話を聞いた訳じゃないけど、ただ現場にいただけなのに何で自分があの事件に関わっていただけであそこまでマスコミにまとわりつかれなければならないんだ・・・と怒っていた人もいたというのは聞いたことくらいはね」
杉下は自分も気持ちは良くないというように話をしていくのだが、小野田はその話の中で出てきた事に確かにというように納得する。






・・・杉下が言ったようなことについてだが、新一は事件を解決する度に集まったマスコミに対して事件の詳細を事細かに話していった。そしてその中身を話す中で登場人物に関しても当然のように話していくのだが、そこに話されたくないといった気持ちを持つ者達の事についてなど新一は一切持っていなかった。この辺りはマスコミとの応対に関して自分を持ち上げることもあって全く嫌悪感など感じた事がなかった事や、単に事件現場で一緒になったくらいの容疑者に収まった人達も後ろ暗い事がないならマスコミに話しかけられることなんか別に大したことではないと勝手に思い込んでしまったことからであった。

だがマスコミに顔と名前が広がることを望まない者達がいたのだ。そしてそういった者達はマスコミをどうにか出来ないかというように自分でどうにかしようとした者もいたが、警察にどうにかしてくれと相談してきた者もいたのである。マスコミをどうにかしてくれと。









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