子を持てば親として、大人として成長するか? 後日談

・・・帰ったら我が物顔で家にいるだとか訪れてくるなんて新一がするのか、というのは今までの新一の生活から有り得るのかと思うことだろう。だが蘭は却って今の状況なら自分に近付いてくる可能性は高くなると見ていた。それは何故かと言えばまだ新一が蘭の事を好きなこともそうだが、小五郎はもう亡くなった上で優作達や英理も施設での暮らしに入って頻繁に外に出るような状態になく、楓もアメリカで暮らしている・・・要は誰かの介入がなく蘭と二人きりでいられるシチュエーションに事欠かないから、そこを狙ってくるのではないかと考えたのだ。

これは前に優作達と話していたことにあったが、新一としては付き合うか付き合わないかくらいの自由だった頃の雰囲気だったりが心地よかったのだろうというような推測があった・・・そして蘭もそれらについて納得したのだが、ふと小五郎の具合が悪くなり出した辺りからマンションを買うことを検討し始めた頃にその推測と共に考えてしまったのである。事務所の後の事や工藤邸をどうするかについてを一段落させたら新一からしたらもう厄介事はあらかた片付いた事になると共に、優作達もいなくなったんだから蘭と二人きりになれるいいチャンスと考えるのではないかと。

蘭としても端から聞けばどれだけ新一が自分の事を好きなのかを分かってると言わんばかりの言葉に自信過剰過ぎじゃないかと言いたくなるが、紛れもない本当の事だというのは蘭が一番理解している。現に頷きこそはしなかったが優作達が施設に入るという話をしに行った後、新一は工藤邸で一人きりより事務所の上で暮らさないかと持ち掛けてきたのだ。いかにもちゃんと気にかけているといったようでいて、キザに決めた顔とセリフでだ。

そんな様子にまだ気持ちは切れてないのかと蘭は思っていたのだが、だからこそマンションの合鍵やらオートロックの番号も預ける気は一切ないのだが、もし仮にそうしてしまえば一番最悪な展開が何かと言うと・・・工藤邸か新しく住むことにした場所をほっぽり出して蘭の元で二人で過ごす、なんて言い出す事であった。探偵としての仕事は勿論こなすし推理小説を読みもするが、それ以外の時間は今までの分を取り返すように蘭と過ごそうというよう。

・・・そんな想像をした瞬間、蘭の体内を怖気が一気に走って一瞬で身を震わせてしまっていた。かつては好きだったキザな笑顔と言葉が、今となってはもう体がハッキリと拒絶をしてしまうというのを感じてだ。

だからこそ蘭は必ずそうなると限ったわけではないが、そういった可能性を潰すことを蘭は考えるようになっていったのであるが・・・そこまでになっているのならいっそ離婚すれば色々といいのではないかというように考えるのではないかと思われるし、優作達や小五郎達からもそういったように言われたことは実際に何度もあった。だが蘭がそうしなかったのには明確な理由があった・・・






「・・・だから後十数年の我慢よ、蘭・・・離婚するだけなら優作さん達やお母さんの力を借りればこれまでいくらでも出来たと思うけど、そうしたら新一が厄介になるのも想像が出来たからそうしなかった・・・でも流石にもう後十数年もすれば私も新一も普通に動けなくなるだろうから、それまでは辛抱するのよ・・・」
それで蘭は自分に言い聞かせるように体を抱きつつ、独り言を漏らしていく。これまでも我慢してきたのだしこれから後十数年、新一のことを我慢するのだと自身に言い聞かせるよう・・・









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