「だからもう少ししたら私はこの家を出て少し古めじゃあるけれど、楓や奥さん達がたまにこっちに来れて泊まれるくらいの広さはあるマンションを買ったからそこに引っ越すわ。これに関しては先に優作さん達にも話していてそうした方がいいという答えももらっているし、楓にも次から日本に帰ってくる時は私が元気な内はそこに来るようにと話してあるわ」
「っ！・・・そこまでもう蘭は準備を済ませてたっていうのかよ・・・俺に何も言わないままで・・・！」
「夫婦なんだから何でそんな大事なこと言わないんだって貴方は言いたいのかもしれないけれど、私達から言わせてもらえば仕事があるが理由っていう最早口癖になった言葉しか返さないし、この家にろくに帰っても来ない貴方からいざ私がこうしたいからこの家から離れるなんて言ったら、それは間違ってるだなんて自分の立場を棚に上げた事しか言わないって簡単に予測出来てたのに、そんなことをわざわざ貴方に言いたい気持ちに私達がなると思うのかしら？」
「っ・・・！？」
そしてもうマンションまで購入済みで優作達も了承済みだといった蘭に新一は流石にふざけるなというよう怒りを浮かべかけたが、反対にお前から言われる筋合いだとかそれらを聞き入れると思うかと要約して言った中身をキッパリ返されて絶句してしまった。いや、正確にはそれらの言葉もだが明らかに冷えていく目の冷たさもあってだ。
「・・・ねぇ新一。貴方、私と結婚してから私が行けば済む用事なら仕事があるから私に行ってくれって必ず言ってきたし、貴方が行かなければいけない用事がある時は仕事をずらさきゃなんねー程の事かよとかって連絡したり会う度に絶対言ってたし、何なら仕事が忙しいんだから俺の空いた時間に合わせてくれよとかまで私達に貴方言ったじゃない・・・そんなことを言われたから本当に必要な時以外は仕事以外で新一が煩わしい事はないようにしようってこっちからは連絡はしないようにしてたのよ？そしてこの件についての話し合いもお父さんの事があって、貴方に時間が空いたのを確認して何もないのを確認してから話そうって貴方の仕事の邪魔をしないようにって私なりに気を遣った物なの・・・でもそういった気遣いは貴方には全くの無駄だったの？せ～～～っかく、仕事をやらなきゃ仕事をやらなきゃってい～～～っつも、い～～～っつも、い～～～っつも言ってきた貴方に余計な事を考えさせずに仕事をしてもらうようにだけしてきた私達の気遣いは？」
「っっ・・・！！」
だがここで一転してニッコリとした笑顔を浮かべる蘭だが、そこからどこからどう見たり聞いたりしても明らかに皮肉だったり当てこすりだったりと、明らかに負の想いを感じさせるわざとらしさと明るさが伴われた言葉の数々に、新一はたまらずダラダラと脂汗を浮かばせながら下を向いて黙りこくるしかなかった・・・今まで言ってきた事に対して蘭が怒りを覚えた上で我慢をしていたのに、それが今ここでその怒りの根深さがあまりにも凄まじいこともだが、下手な言葉一つ返すだけ・・・それこそそれでも仕事が大事だったからなんて言葉を吐いたらもうどうなるか分からないと、今までにない危機感を新一は感じてしまった為に。






・・・今蘭が言ったことは誇張も何もなく、大袈裟な事は一つもない真実しか語ってない言葉だった。用事がある時にそういったことを言っても仕事が仕事がで不満タラタラな様子を隠すことなく返し、その度その度に蘭達も苛立ちを覚えてきたことは。

だがもうその時には新一はほぼ工藤邸に帰らない生活に入っていたし、もう本当に必要な事をやらなければならない時には最初から電話を入れるのではなくメールなどで間を取るよう連絡をして、そういった忙しいのにといった愚痴めいた言葉を聞かずに済ませるようにして苛立ちを少しでも抑えるようにしてきたのだ。どうせ新一にそれらを指摘しても改善など求めても効果はほぼほぼ見込めないのは分かっていた為に。

だが勝手に事を進めてきたという非はあったとしても、それを推し進めさせた原因であるお前が言えたことか・・・と小五郎の事がまだ完全に怒りの炎を消火しきれてないのもあって、また蘭は怒りを見せたのである。今まで話をするための時間を作ることすらしなかったのはお前の方だろうと。









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