子を持てば親として、大人として成長するか? 後日談

「・・・そこまでするのか、みたいに言いたいんだろうなって今の反応から分かるわよ新一。でもあのビルの所有権に関しては私が持っているからそんなことしないでくれって言われても所有者の権利を使うから貴方の気持ちは反対だからで止めるなんて事はしないし、何なら二年という期間があるだけ全然マシなのよ。と言っても何で二年なんて期間なんだって気持ちになるかもしれないけど、それは単純に事務所の下の店が契約する期間がそれくらいだからって物で、お父さんが亡くなったのもあってからもうあそこは切りよく二年って期間で使えなくした方がいいって思ったからなの」
「ちょっ、ちょっと待てよ!言いたいことはおっちゃんの気持ちを含めて分かったけど、それでも今のままを続けりゃ蘭に家賃が入ってくることには変わりはねーじゃねーか!なら少しでもその期間を伸ばして今まで通りにしとけば蘭の懐は潤うんじゃねーのか!?」
「・・・ふぅ」
その姿を見て二年後まで使えるだけいいというのを理由付き、と言っても下の店の都合からとの事を言う蘭だが、新一は即座に慌ててまだ期間を伸ばしてほしいと言わんばかりに蘭の利についてを口にしてきたことに、そっとタメ息を吐いて目を閉じる。
「・・・お父さんからあのビルの所有権をお母さんにじゃなく私に渡した理由ってさ、私に貯金だとかの遺産を相続させるより先に私に事務所や店の家賃をもらえるようにして、私に入るお金を増やせるようにするためだったの。そしてその期間については簡単に言っても十年以上の時間があって、生活費だとかに関しては優作さんの厚意もあってそこからお金を出すようなこともなかった・・・だからって言うのもなんだけれど、もう余程酷いお金の使い方をしなかったらこれからの生活のお金の心配もしなくていいし、楓にある程度の遺産として渡せるだけのまとまったお金は私の懐にあるの。だからもうお金を少しでも稼ぐ為にとあのビルの解体を先送りにするつもりはないわ」
「っ!!」
そこから目を開いて何故ビルを受け継いだかに自分の懐の内はどんなものなのか・・・それらを語っていく蘭に、新一は驚愕して目を見開くしかなかった。そこまでの金が蘭の懐にあると今更ながらに初めて知って。






・・・小五郎が蘭にビルの所有権についてを60の時に渡した理由。それは先の話にも出たがビルの解体に関してを将来的に蘭に任せたいということと、蘭の懐に金が出来る限り入るようにしたいと思ってのことからの二つの理由からだった。と言ってもそこに新一に言ってない理由があるのだが、それは新一の事を快く思わないからこその対処だと小五郎は口にしたのだ。

特にビルの解体に関してであるが、本来なら小五郎が50年という節目になったら自分で音頭を取って解体に取り掛かりたいと思っていたとの事だった。まだその時なら70少しといったくらいで元気でいられる見込みの高い年齢だからと・・・しかしそうして考えていく内に懸念材料として出てきたのが新一の存在なのである。

その時になれば確実に新一は拒否だったりギャーギャーと喚くだろう光景が目に見えた。今すぐでなくてもいいだろうであったり、後始末は俺がちゃんとするからというようにあのビルを壊させまいとするために色々と手を講じる形を取ってだ・・・この辺りは他人との関係だったり気に入った物を放置しても変わるものではないと考えはするが、かといってそれが失われる事になることは認められない性質の強い新一の性格を見切っての事だ。

更に言うなら新一からすれば最早工藤邸より断然に過ごしている時間が長いこともあって、賃貸扱いとは言えもう探偵事務所や上の居住区は新一が個人で持つ家とすら何処かで感じているのではと小五郎は考えたのであり・・・だからこそ新一からしたら居心地のいい家や仕事場を失うことを避けるために激しく抵抗してくるだろうとも感じたのである。

だがそれで新一が後始末はちゃんとするからなんて風にいうような事を言ってきても、小五郎は全くそんなことを信じる気にはなれなかった・・・今までの探偵としての活動を優先して他の事を様々におざなりにしてきた経緯が経緯なだけに、探偵を辞めるどころか80を超えてもまだ活動するなんてことをして、気付いたらそういった手続きを取れない状態になった上で一人満足しながら悪い後は頼むと、結局は探偵として世のため人のためとなったんだからというように勝手に許されるだろうと思いながら逝くのは新一なら極めて有り得ると見てだ。









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