子を持てば親として、大人として成長するか? 後日談

「いきなりどういうことだって反応ね・・・でもお父さんからそういうようにしてくれって言われた理由を聞いていくと、私も納得出来たからそうするって頷いたの。あのビルを解体することに関してをね」
「な、何でそんなことをおっちゃんが・・・!?」
「まず第一にあのビルがもう建てられてから半世紀以上経っていて、建築法の関係から見るとあまりもう長く残していいものじゃないらしいってことからよ」
「え・・・建築法・・・?」
その反応に蘭は淡々と話を続けていき、驚きを隠せていない新一は建築法が第一にあると聞いておうむ返しのように声を漏らす。
「私も建築法について詳しい訳じゃないけど、建築法に照らし合わせると普通のビルの耐用年数といったものって長くて50年ってことらしいんだけど、もうその年数は数年前に超えたのは貴方も思い返すと分かるんじゃない?」
「・・・そう言われると、俺がまだ一桁くらいの頃からあのビルはあったのは確かだ・・・」
「そう。そしてそのことについては私やお父さんもよく知ってたけど、そうして50年を超えた頃にお父さんに言われたの。今すぐにとは言わないが、それでも私達が70になる前にまだ元気でいられていたならあのビルを解体するようにしてくれって」
「っ、な、なんでそういう結論をおっちゃんは出したんだよ・・・確かにあのビルは古くなったかもしれないけどまだ使えるし、50年経ったら絶対にすぐに取り壊せなんて命令が出るようなもんじゃないだろ・・・?」
「そこに関して第二の理由として資産価値はもうかなり低くなっているし、後でなんて風に後回しにしても更に価値が下がって買い手なんかつかないのが目に見えてるって言われたことかららしいわ」
「・・・え?」
蘭はそんな新一にいかにあのビルが古いかを語っていくが、古いくらいなんだよといったように返してきたことに第二の理由についてを挙げるとキョトンとした顔になった。
「貴方も分かるでしょ?古い建物を買うのもそうだけど、借りるってなっても古いっていうだけで新しく建てた時より安くなるのは普通は当然だって事については」
「そ、そりゃ当然だろ・・・余程何か価値のあるもんが付いてないなら、同条件なら古い方が安いのは」
「そうでしょ?その上で今あの事務所の下にある店についてだけど、あそこもポアロの時の六割くらいの家賃で貸し出してるのだけれど、それも立地が悪かったら後一割くらい安くしなかったら借りられなかった可能性もあるくらいだそうよ」
「なっ・・・ちょ、ちょっと待てよ!俺も契約だからってことで契約書は度々書いてんのに、なんでそういった時に家賃の値下がりの事について言わなかったんだよ!?」
「そこに関しては確かに少しズルいなとは思ったけれど、お父さんが新一が何も言ってこないならもう家賃の事は言わないままで済ませようって言って、優作さんもそれに賛成したからになるわ。優作さんが言うにはそもそも賃貸契約っていうのは色んな条件を踏まえた上でそれに満足して契約するかどうかもそうだし、古いからとか傷があるからみたいなことで代理店経由ならともかく個人間なら交渉も出来ない事はないってこともだけれど、そもそも上の住むところまでセットで貸してもらってることを考えると今の価値でも破格だって言ってたわよ?」
「う・・・それを言われると何も返せない・・・」
蘭はそんな新一に資産価値もだが家賃の事についてを話していくとたまらないとばかりに怒りを見せるが、即座に返した答えの数々の中の最後の理由に途端に声を詰まらせるしかなかった。実際上の居住区は小五郎の厚意でタダ同然で貸してもらっていた事を考えると、家賃が高いなんて言えるものではないと。






・・・ただここで新一は事務所の家賃の件について黙ることになったが、それでも家賃に関して安くすることも出来ない訳ではなかった。だがそれをしなかったのは実は小五郎が蘭に事務所の家賃が手元に入るようにとしていたことからであった。









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