子を持てば親として、大人として成長するか?

そんな話し合いをした後も楓の成長を見守っていく優作だが、口数が少ないなりにバスケ関連で良好な友人関係だったり先輩後輩といった間柄の人物達との仲を良好に作っていく様子もだが、蘭もだが小五郎が積極的に楓のバスケに付き合う様子が優作達の目には驚きと共に新鮮に映ったのだ。楓がバスケに興味を持って取り組むまでは特に好きでもないものだったし、特に目立った運動をしていたわけでもない50間近の年齢と衰えた体で子どもの体力に付き合う形でだ。

そんな様子に優作達も体力を始めとして色々と大丈夫かと小五郎に問うのだが、本当に楽しそうに動き回る姿に付き合い向き合えることや、本当に楽しそうにする楓の為なら後で来る体の辛さくらい屁でもない・・・そう笑顔で語る姿に有希子は小五郎ちゃんらしいというように笑ったのだが、優作は有希子程小五郎との時間を過ごしていなかったからこそ感じてしまったのである。自分は新一とあそこまで体を張って付き合ったり遊んだりしたのかに、小五郎に対して色々文句を言ってきた蘭が小五郎の事を本当に嫌いにならなかったのは何故なのかということを。

・・・優作としては新一と演技の際のように意見の相違があってぶつかり合ったことがあったり、今のように最早親としてや一家の大黒柱としてはもう望めないと見放しはしたが、それでも親子としての関係は良好であったという自信はある。だが楓に対しての小五郎のように全力で新一と体力を使い果たすくらいに向き合うようなことがあったかと言われれば、そんなことはなかったと言えた。

それは新一が夢中になっていたのが優作の影響で推理小説が好きになったからという物だったからだ。言ってはなんだがいくら当時の新一が周りの子どもに比べれば抜群に頭がいいだなんて言ったところで、その知識の大半の大本は優作からの物であり単純な頭の良さは今ならまだしも当時の新一では比較にならない程に隔絶した差があった。それに新一は優作の推理小説家という立場を重んじてだったり仕事が忙しいというのもあったのだろうが、推理関係では積極的に話し掛けはしても優作と運動して遊ぶといったことを持ち掛けるようなことはなかった。この辺りは体を動かすのは蘭や他の子どもとの時でいいと思ったかどうかは優作は聞いたことはないが、そこまで積極的に新一の為にも体を動かそうと優作が誘うような事をしなかったが為だろう。

だからというか優作からすれば小五郎の行為はこれが本気で子どもと向かい合うという行動ではないかと感じてしまったのである・・・例え後で本気でヘトヘトになるだとか体が辛いだとかというような事になっても、子どもの為にと付き合っていくのが親として正しいことなんではないかと。そしてだから楓とは違い女の子だったから様々に違う点はあれども蘭はそういうように面倒を見てくれた小五郎の事を、何だかんだ言いはするが好きなのだろうと。

だがそうして小五郎の姿を見た後だからこそ自分はそこまで新一の為にしていなかったどころではなく、むしろ自分が大人として余裕綽々の様子しか見せずにいたことが新一があのようになってしまったのだと優作は後悔する形で考えてしまったのである・・・余裕を持ってカッコよく、それでいて探偵として事件や謎を解明する事が周りの為になるからと至上にすることにこだわるようになり、家庭を持つことや子どもを持つことは本当は苦労も伴われる物でありその苦労が報われて初めて家庭が成り立つのだと、自分は身をもって教えられなかったのだと。

そして今更それを言葉にしてももう新一は自分は家族の為に苦労していると言って聞き入れないだろうし、無理にそうさせようとしても抜け道を探そうだとか自分達に出ていくようにしてほしいと切り出してくる・・・そう考えたからこそ優作は新一について改善するようにと諦めないより、自身も慣れないなりに小五郎程に体を張るとまでは言わずともバスケのパス出しだとかアドバイスなりをするといったよう、新たに取り組もうと考えるように動いていって楓の祖父として頑張っていったのである。その結果として新一に関しては親としてやれなかったことはあるという悔いはあるが、楓に関してはやれることはやれたという自負は少なからずあった。少なくとも実の親である新一よりは断然に好かれ、頼られているという現状から。

だが今自身も引退して楓もセカンドキャリアを歩む今だからこそ、考えることもあった。それは・・・









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