「ただ本格的にそういう風に動く前に少し時間が欲しいから休ませてくれとは言いました。今回こちらに来なくていいと言ったのは引退の報告に関しては日本に帰って直にしたいと思っての事だったので」
「あぁ、挨拶回りを兼ねて帰ってこようと思っていたということか。そういうことだったか・・・いつもはいつ来てもいいと言っていた楓が来なくていいと言ったのは」
「はい。そしてその挨拶回りを終えたら特に用がなければ、もう日本に帰ることはなくなると思います・・・俺はもうこっちに骨を埋めると決めたので」
「その事は前にも聞いたから構わんさ。こちらで結ばれたお嫁さんの事や子どもの事を考えれば、日本で将来的に暮らすなんて事はストレスになる可能性が高いだろうという楓の考えをな」
その上で何故今回来なくていいと言ったのかについて話の流れを楓は変えるが、その中でもう日本に帰るつもりがないと聞いて優作は前にも聞いたとすんなり頷いた。






・・・アメリカのバスケットのトップリーグチームで活動をする傍ら、楓もまたとある女性と出会い結婚することになった。と言っても主な活動場所がアメリカということや日本にあまり帰ってくることもなかったのもそうだが、世界でもバスケットのトップリーグでＭＶＰを取れるような楓の注目度が高かった上に顔の造りが良かったことも加わり、アメリカの女性からのアプローチに事欠く事はなかったのだ。

だからそんな楓はそういった女性達と対面しつつ、とある一人の女性と出会って付き合うことになって結婚したのである。楓がバスケットを行うことに理解を示した上で楓を支えることを選んだ女性とだ。それでそうして楓はその女性と子作りをした上で子宝に恵まれ、二人の子どもを授かることになったのであるが・・・基本的にアメリカで暮らしてきた上でアメリカの女性と結婚した事で、その二人の子どもは当然アメリカの学校に通っていた。

その事により楓からある程度日本だったり日本語については教えられたり、オフシーズンの時には日本に共に行くこともあったのだが新一達と違って二十代後半で結婚して子どもが出来たのもありそこまで子どもが大きくないこと・・・それに何より楓がスタッフ側に回るということから、もう楓は日本に自分の家族と共に移住なんて選択は選ばずにアメリカでずっと暮らすと選んだのである。家族に無理をさせないということも兼ねてだ。






「・・・まぁその事については楓が選んだことだ。私達も納得済みのことだから反対する理由もないが、もししばらくしてから何かあって一時的にだとかで戻ってくるような事があれば蘭ちゃんを頼るようにしなさい。一応まだ土地や家の名義は私にあるが、もうそろそろ私達が生活出来るくらいの金を手元に残して貯金も含めて新一に生前贈与という形で財産贈与をする予定だ。ただその後に関してがあることは蘭ちゃんというか毛利さん達と話してあるから、まだしばらくはいいだろうがあの家のことも含めて色々決めるつもりだからその時以降は蘭ちゃんに連絡を取った方がいい」
「・・・その事に関しては後で聞くことにしますが、そういうことなら分かりました。そうさせていただきます」
ただそこで優作が日本に帰る場合のことについてを口にしていくのだが、意味深な中身にもそうだが何かを予感させるその様子に楓も静かに理解したというように頷き返した。これから日本で何が起きるのかについてを朧気に。









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