領域を踏み荒らす者に渡す報い

・・・蘭が小五郎の元を離れて英理の元で生活をし始めて一年以上が過ぎた。もう蘭は小五郎の元に戻る気など一切ないという様子で帝丹高校で過ごしており、ルルーシュとカミーユは時折そんな様子を見て小五郎に報告をしていた。今となっては普通となっている三人だけの食事の場で。

その際に小五郎はもう気にした様子を見せることはなくなっていった。蘭の様子もそうだが、英理も特に何か報告なりを送ってくることもない・・・それはつまり英理が蘭との生活に大きな問題がないと判断し、不平不満も何も言うことはないのだと考えて。

ルルーシュにカミーユはそんな小五郎の現状を失礼ながら、悪くはないと感じていた・・・確かに蘭が出ていったことによる寂しさは小五郎にはあっただろうし、英理と元に戻るのには難しい状況にはなっただろう。だがそれも二人からの言葉のおかげで自分から気持ちを整え、蘭達と離れると選ぶことが出来た。おそらくそうすることが出来ていなかったなら、色々とまだ面倒な事と対処しなければならないことが多かったであろう。

しかし今の小五郎には妙な事で気を揉むこともそうだが、蘭に強がりだったり変に気を配る事も必要なくなっている・・・蘭は小五郎がだらしない人間であったり深く物事を考えることが出来ない無配慮な人物だと思っている節が多々あったが、それはあくまでも男としてや親としての意地や配慮で見えないように小五郎が隠してきただけだ。

まぁ実際に小五郎がだらしないといった部分がある事は否定は出来ないが、それでも食べ物一つ満足に取ることも出来ないくらいに生活に困窮する程仕事がないなんて事はなかったし、そもそも仕事が来たからとその内容をベラベラ喋るのは一般的に秘密にしたいことを頼みに来る依頼者が多い探偵業をするにあたって、プロ失格と言っても過言ではない行動だ・・・故に小五郎は伝えるべき事は伝えるが、伝えない方がいいことは何かと判断して黙っておくことが出来る判断力に演技力は持ち合わせている。単に蘭はそういった部分を近すぎて見ることが出来なかった為だ。

その点、ルルーシュとカミーユの二人はそういった小五郎の考え方や動き方も加味した上で探偵の仕事に関しての話題であったり、事務所への出入りなどは極力しないようにした上で最初から小五郎と接していた。一応は食事を共にして時々買い物などで出掛けなどしたり親密に交流しこそはしているが、そういう仕事に関してはノータッチの方が小五郎としてもやり易いだろうと考えてである。

そういったようにちゃんと仕事とプライベートを分けて小五郎と接してきたことから、蘭がいなくなったことも相まって小五郎と二人の仲は深まっていった。国籍が違うだとか人種が違うだとかそういったことなど関係無く、端から見ればもう蘭より余程うまく親子になっている・・・そう小五郎の友人達から見られるほどに。

・・・そしてそんな二人にとって、許されない事件が起きることになる・・・


















「・・・トロピカルランドで新一と蘭がデートか・・・」
「順調に関係性は進んでいるようだな、あの二人は・・・」
・・・帝丹高校の自分達のクラスの中、休み時間中に前のルルーシュが後ろの席のカミーユに向かい合いながら話し掛ける。新一と蘭についての話題を。だが話し掛けられたカミーユの表情はあまり浮かない物だった。









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