ズレてこそ見える物があり、考え方は変わる

「んじゃそれでいいじゃん。ただ俺はこの後に用があるからそろそろ行くけど、最後に一ついい?」
「あ、はい・・・何ですか?」
「時間をかけて新一君が戻ってきても結論が出ない場合みたいなのも有り得ない訳じゃないと思うからさ、もしそうなったらそれからの日常を過ごしてどうするかを決めなよ。嬢ちゃんの性格からしてそんな感じになったら慌ててそうしそうだからそうならないように、ね」
‘トン’
「っ・・・分かりました、そうします・・・ありがとうございました・・・」
そうして男はベンチから立ち上がり最後に言いたいことを言った上で笑顔で蘭の額に人差し指を軽く当て、蘭は額を抑えつつ少し恥ずかしげにしながらも礼を述べた。去り行く男が肩辺りで手をヒラヒラ振る姿を見届ける形で・・・




















・・・それから蘭はしばらくの時間を色々と考えながら過ごしつつ、たまに来る新一からの連絡だったり直の顔合わせの時間を過ごすことがあったのだが、そういった時間を過ごしていく内に蘭の心は段々と新一に対しての気持ちが以前に比べて変わっていくのを感じていた。それは言ってしまうならば新一への気持ちが冷めて行く方にだ。

これは園子からの言葉もそうだが、男からの言葉がどちらかと言えば大きかった・・・園子も園子で親身になってはくれたのだが、そこに考えるようにとは言っても男の言ったように時間を使うべきだと言ったような文言はなかった。もし時間を使うように言われなかったら蘭は早めに結論を出したいというように焦ると共に、たまに会う新一が戻ってきたのだからと急いで結論を出すようにしてしまったことだろう。

だがたまに会ったり電話をする新一の様子からまだまだ時間はかかるといった様子なのを聞いたり察知したりすることで、蘭はまだ新一は帰らないのだと考えるのと共にこうも考えるようになっていったのだ・・・園子からは度々夫婦だというようにからかわれたりしてきたし新一からは少なからず悪くないといった気持ちを感じてきたし、自分は新一を好きだという気持ちがあるのは確かなのだが・・・この離れ離れの状態がいつまで続くのかも分からない状態もそうだが、その事件とやらが解決しても別の事件が起きればまたそちらにかかりきりになる可能性の高い新一を自分は待てるのかと。

まだそろそろ新一が戻ってくるといったこれだけなら待てるという明確な時間の区切りが出来たなら、蘭もそんな風にはならなかったことだろう。だがいつ帰るか分からないのだからと考えるだけの時間があると見たことから、これまでのことも含めて考えてしまったのである。自分は今までも大分待ったし、これからも待たなければいけないのかと。

そしてそういったように考えていく中で蘭はとある考えを抱くようになった・・・前に新一は自分の事は声を聞けば蘭の事くらい分かると言っていたが、そんな分かるという新一からは自分に直接会いたいみたいな言葉は一度も聞いたことないのは、自分と違ってたまの電話や会合でもういいと満足していて、自分が新一に向ける程の会いたいという熱量などないからこそこんなに新一と自分はズレているのではないかと。

・・・ただこの考え方に関してはこう考えた蘭もそうだが、そういったように蘭が考えるなんて新一が考えなかったことが原因だった。なら何が原因なのかと言えばそれは実は蘭の予想であったコナンは新一なんじゃないかという予想は当たっていた上で、その事を誤魔化すことのみに徹底したことで新一自身は蘭と長い間離れ離れになっているなんて事は思わず、むしろコナンとして予定がなければほぼ毎日近くにいることに満足しているから、キザに決めることにこだわることもあって自分も蘭に是非とも会いたい・・・といった想いを欠片も見せていなかった事にあるのである。









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