ズレてこそ見える物があり、考え方は変わる

・・・毛利蘭にとって工藤新一とは小学生になる前から出会っていた異性であり、初恋の存在である。そしてそれは新一側からしても同じような認識であると共に、互いにその想いを打ち明けないままに同じ小学校に中学校を通って高校も同じように進学した。

ただ何故その想いをどちらかから打ち明けなかったのかと言えば、蘭からすれば自分から告白するのではなく新一から告白してほしいという気持ちがあった上で、新一も蘭には自分から男としての見栄だとか様々な考えの上で告白したいという合致があったからだ。だから新一と蘭は想いを互いに寄せつつも、新一が告白していないことにより恋人という関係には今も到っていないのだが・・・なら何故新一が蘭に告白していないのかと言えば、それは告白しようとしたタイミングで吸い寄せられるように殺人事件を始めとした厄介なトラブルで何度も何度も起きてしまう事が大きな理由であった。

これは当人は決して認めようとはしないが、新一の周りでやけに事件が起きやすいことにあった・・・探偵として事件や謎の解明を使命といったように考える新一が近くにいる時を狙いすましたかのよう、新一が近くにいる時にばかりそのような事になる形でだ。そして新一が蘭にいざ告白しようとデートに誘った時にことごとくそういった事件が起きたことにより、新一は事件解決をするために集中して結果的に告白は出来ずじまいで進んでいった。

ただそんな事が長い間続いても蘭が新一の事を嫌いになるというか関係に見切りをつけなかったのは、新一が好きだからということもあるのだが恋は盲目という言葉があるように蘭が気付いてなかったからであった。互いに好きあっていること自体は間違いではないしその想いを少なからず互いに感じてはいるのだが、実はその想いの在り方はズレているということに・・・


















・・・時間は進み、高校二年の始めといった頃に蘭は新一と遊園地でデートをした。だがそこでのデートで起きた事件により甘酸っぱい空気はなくなり、新一も事件を解決するために真剣に事件に向き合ったことでデートは中断という形になった。

ただそれでも然程時間をかけずに新一が事件を解決したことでデートは再び続くことになったのだが、その事件の際に容疑者となっていた怪しい人物の怪しい行動を見た新一は蘭に気になる事があるからと誤魔化すように一人で帰るように言って、笑顔で蘭の元を離れていった。

・・・そんな新一にらしさを感じると共に言いようのない不安も感じていたのだが、一人になった蘭は時間も遅くなっていることから他にやることもないことで帰路についた。



「・・・えっ?お父さんと、誰?」
・・・そうして住みかの階段の前にまで来た蘭だが、そこで父親の小五郎と肩を組みながら歩いてきたタキシードを来た無精髭の男と鉢合わせをした。
「お~う、ちょうどお前も帰ったのか蘭~・・・ヒック」
「ちょっと、お父さんお酒臭いよ・・・」
「悪いね、嬢ちゃん。ちょっと君のお父さんと居酒屋で会って意気投合しちゃって一緒に飲んでたんだけど、この通りお父さんベロベロでさ。だからちょっと家の鍵開けてくれない?」
「分かりました・・・もう、お父さんったら・・・」
そこで小五郎も蘭に気付き声をかけるが、明らかに赤ら顔に目が座ってて酒の匂いが漂ってくる酔っ払いそのものな様相に蘭は顔をしかめ、顔色は小五郎より全然普通なタキシードの男がヘラりと笑いながら経緯の説明と鍵を開けてと言ってきたことに、仕方無いとブツブツ言いながら蘭は階段を登っていく。






・・・そうして蘭は家の入口を開け、男に支えられた小五郎を迎え入れた。









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