恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 後編

「・・・今の話を聞いてお前達がどういう風に思うかまでは俺は知らない。だが俺の言うことに少しでも感じるところがあるというなら今日ここでした話を持ち帰って、どうするのかについてを二人で話し合うなりどうするかを自分で考えろ・・・俺が言うべきことは言い終わったし日本を出るから、後にどうするかはお前達次第だ」
「「・・・っ!」」
それでセフィロスがもう後は自分達でやれというようにまとめて告げると、二人はたまらず苦い顔を浮かべてうつ向くしかなかった。思うところが出来たのは確かだが、明確な答えを出されないまま終わらされたくないというのが二人の正直な気持ちだった為に・・・






・・・ただそういったように思いはしたものの、もう二人に言えることは何もなかった事からフラフラと部屋から出ていくしかなかった。
「・・・やれやれ、やっと行ったか」
そうしてセフィロスは少し疲れたといったよう、首を横に軽く振る。
「だがあぁでも言わなければあの二人は時間が許す限りここに残ってまだ色々と言ってきただろうからな・・・あまり俺としても前の事は言いたくはなかったがな」
ただそれでも必要な事だったからというように、前の事とセフィロスは漏らす。遠くを見るような目を浮かばせながら。






・・・セフィロスが言う前とはこの世界で生を受けてからの事ではない。それはいわゆる前世と呼ばれるような記憶があった上で、その記憶からの話をしても今生での幼少期の状態と少なからず共通していたから嘘だと勘繰られないだろうからと見てそれらを話したのだ。これなら疑いをかけられる可能性は低いだろうと。

その上でセフィロスももう割り切ってはいるが、前世の両親に対して抱いていた気持ちに関しては嘘ではなかった上で、親がこの二人である・・・特に父親がこの人物であると知った時には相当な衝撃を受けたものだった。自分が父親だなどと言わないままにセフィロスを実験体というように粗雑に扱ってきたあの男がそうなのかと。

その上で母親についても知った事に加えてどのようにして自分が他者とは違うような存在になったのかも知ったのだが・・・百歩譲って母親に関しては精神的にかなり追い詰められていた姿からまだマシな見方を出来たが、父親の方に関してはもう評価を逆転しようがない程の屑だという認識が改まって強まったのである。自分の為にという気持ちばかりで動き、セフィロスに対して愛情といった実の子どもに向けるべき感情など一切持ち合わせなかった様子に。

だからセフィロスにとって前世の両親という存在に関しては母親はまだマシにしても、どちらともに科学者としての欲望を優先した事から自分を含めた様々な悲劇が生まれたことから、受け入れがたい存在だというようにしか思っていなかった。少なくとも普通の家庭として両親と共に暮らせと言われても、受け入れがたいとしか思えないと。

そんな風に前世の両親については考えたのだが・・・セフィロスがこの世界に生まれ変わった時は何故か赤ん坊としてではなく三歳程度の頃の姿で、砂浜に倒れこんでいるという状態で生まれ変わった事にどういうことかという困惑が大きかったが、今となっては下手な存在が家族となる・・・それこそ前世の両親が家族となるなど冗談ではないとしか思えなかったから、むしろ一人で良かったと思えたくらいだった。特にあの父親と一緒だったならまたろくでもない事になったのは目に見えていたからと。

そこはともかくとしても、そんなろくでもないとしか表現しようもない両親の事から新一達にセフィロスは色々と話をしてきたのだ。お前達の親は自分の両親などと比べるまでもなく善人であって、恵まれた存在なのであるということを自身の体験を踏まえたこれ以上ないリアリティを含ませて萎縮させるためにと。









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