恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 後編

「・・・そもそも今お前達が不平不満を抱き、それらを度々ぶつけても完全にまでは見放されない状況は俺から言わせればまだ恵まれていると言っていいものだ。俺は立場的にそんなことを言えるような存在などいなかった上で、中学を卒業という年齢になる頃には働ける能力は十分にあると見られたのもあって施設を出て働く事になったからな」
「「っ!?」」
そこでセフィロスは敢えて少し低くトーンを落として自分が働く事になった時の状況を口にすると、効果は覿面とばかりに驚きと共に信じられない物を見る目を二人とも向けてきた。
「まぁその辺りに関しては施設側からすれば出来るだけ自立出来る者には早くそうしてもらいたいというのもあるが、向こうでは中学を卒業すれば高校に行かずに働くであったり様々な理由で育った場を出ることはそう珍しくはない。その結果としてアウトローとして身を落とす者もいるが・・・少し話が逸れたから戻すが、施設で育った俺は他の者達より自我の確立が出来ているということや能力が高いと見られたことから、俺は施設の人間に手間のかからない子どもだというように見られていて仲が悪かった訳ではないが、かといって取り立てて仲がいいと言えるような関係は築いていなかった。まぁこの辺りは能力がどうこうじゃなく、不特定多数の子どもを相手にすることから特定の誰かを気にかける事は良くないといった考えからだとは思うが・・・重ね重ね言うが不幸自慢のつもりで俺は言ってはいないし、今の俺はもう今から言うことに関しては割り切っている。なら何を俺が言いたいのかと言えば・・・何故俺は他の人達と違うのか、何で俺には親がいないのかということについてを昔は考えていたんだ。どうして自分はこうなっているのかということを一時期ずっとな」
「「っ!!」」
そんな二人に過去の自身やその周囲の環境についてを説明していくセフィロスだが、過去のセフィロスがいかに思い悩んでいたのか・・・言葉には引きずっているような響きは言っているように一切ないが、それでもその重さを感じさせる苦悩の過去に二人はただそれらを辛そうに聞き入れるしか出来なかった。新一も蘭も自身らもそうだが周りにそんな立場の人間などいなかった為に。
「とはいえそういった事を考えていたことについてはもう大分前に区切りをつけたから俺としては思うところはもうないからいいが・・・さっき言ったことも踏まえてお前達からすれば当然の要求を俺や工藤さん達に通すといった行動は、早くに自立せざるを得なかった俺から言わせればこの日本という環境で高校までは一般的な家庭なら子どもに通わせるのが普通だということを差し引いても、茨の道と知りつつ自立して自分で稼いで生きることを選べる年齢であるのにそれを選ばず、ただ前のように甘やかしてくれ・・・といったようにしか思えないということだ。金さえあれば自分や新一は一人で暮らせるんだから金を与えてくれなんて、とても将来的に探偵として立派に自立して活動しようとする存在とは思えない甘えだとな」
「「っ!!?」」
・・・そして今までである意味一番新一や新一を好きな蘭にとって、衝撃的であって聞きたくなかったであろう言葉がセフィロスに投げ掛けられたことにより、二人は蒼白な顔を浮かべて衝撃に絶句するしかなかった。尚セフィロスや優作達に文句を言うことは探偵として甘えているし自立出来ない存在だというような中身の言葉に。









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