いつかを変えることの代償 前編

・・・元々小五郎がタバコやギャンブルに手を出していたのは前者は探偵はタバコを吸ってこそカッコいいという思いからで、後者は前に何となくやった時に一度当たった時のうま味を忘れられなかったからという単純な理由である。

だが今生では成人するまでの長い期間で法律を犯すような事をしないようにしようとしていたのと、それまでの間に一度やるから癖になって依存までするのだからもう最初から手をつけない方がいいと考えて決めたのだ。もうタバコもギャンブルもらしいという何となくで手を出すのも、ハイリターン目当てでハイリスクを犯すのも止めようと。

故にタバコとギャンブルに手を出していない小五郎の懐から金が一気に出ていくということなどまずないことであり、一人暮らしで子どものいない小五郎は以前と比べるまでもない程の余裕の金額を通帳に貯め込んでいた。









「・・・後は眠りにつくまで本でも読むか・・・」
それで食事も終わり、風呂にも入ってベッドに寝転がりつつ小五郎はまた本を手に取る。









・・・最早別人ではないかと思うほど、人やら趣味やら色々と変わっている小五郎。だが小五郎からしてみればこうやって逆行している以上、前世での自分はその時にもう死んだものと考えている。

全部が全部そうだという訳ではないが、逆行物の話の際に付き物の展開はその時に死んだかそれに準じた状態であるのが王道・・・そうでなくとも今の自分がこうやってここにいるのだから、戻れないかつての事を考えるより今が小五郎にとっては重要だ。

だからこそ今の自分が前の自分と比べて相当に変わっていようが、最早どうでもいいと小五郎は考えている。今の自分の生活・・・かつての知り合いと関係を深くすることを拒み、一人で生きると選んだからこそ得られた平穏を守れるなら些細な事だと・・・


















(あ~・・・久しぶりに事件に巻き込まれちまったな・・・つっても前のように俺が口を挟んじまっても不動町は目暮警部殿達の担当じゃねぇだろうし、今回はそもそも俺は警察に入ってすらいねぇし・・・何より俺が推理してもどういった証拠があるかとかトリックが使われたとかそんなこと考えず、パッと見たまんまにあるがまんまで考えてしまうだろうしな・・・ここは黙って一人の容疑者として事情聴取を受けるか・・・幸い俺は今日ここに依頼があるって呼ばれただけだから、あんまり疑われる心配も無いだろうしな)
・・・それで翌日、仕事の依頼の電話を受けて依頼人の家に直接行った小五郎。そこで依頼人であったと思われる男性が何者かに刺されて死んでいて、三人の男女がそれを目撃して立ち止まっている場面に直面した。
小五郎はすぐさま警察に連絡し、すぐさま到着した警察の前で三人の男女の横に並ぶ形で考え事をしていた。前世の経験から自分が推理してもうまくいく可能性の方が低いため、大人しくしておこうと。
「・・・こちらが発見者の方々ですか?」
「ハッ!警視殿!」
(警視?あの明らかに俺よっか年下な兄ちゃんがか?・・・あぁ、キャリア組ってヤツか。前の警察時代は目暮警部達のグループの中にいて、警視以上の面々なんて松本さんくらいしかロクに交流も無かったからあんまり知らねぇんだよな・・・しかしこんなイケメンが警視たぁ、天は二物を与えるってのはこういうことを言うんだろうな)
そんな時に小五郎達の前にいた警官の元に現れた銀髪の眼鏡をかけたイケメンの登場に、小五郎は内心で素直に感心する。以前ならキザでいけすかない野郎だと悪態の一つもついていただろう相手に。










9/11ページ
スキ