恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 後編

・・・志保に降谷の二人は共に組織と関わっていた時間が長かった上で、組織でも指折りに危険な人物として認知されていたジンというコードネームの人物とは顔を合わせた時間こそ少ないものの、その立ち位置だったり行動の影響から組織の人間の中でも最も厄介な者だというように認識していた。特に志保はトラウマを刻まれた相手としてその姿・・・とりわけジンのトレードマークとも言える長い銀髪という特徴にはいい思いを抱いていなかった。腰にまで届くような長い銀髪を持つ男など、そうそういなかったのだから。

だからこそそんな二人からしてセフィロスという存在に出会った時、各々ジンを思わせるその長い銀髪を見てたまらず警戒の気持ちを抱いてしまった。特に志保はセフィロスの姿を見た瞬間、優作達に騙されたのかというように慌てて逃げ出そうとした。

しかし二人ともにセフィロスの所属機関について聞いたこともそうだが、何よりその生い立ちを聞いたことでセフィロスとジンの間に血の繋がりはないだろう事はほぼ確定した上で、セフィロスから例え血の繋がりがあったとして敵であることに変わりない・・・というように微笑を浮かべながら言われたことから、一先ずは敵ではないと見るようになった。

だがそれで敵ではないと考えるようになったのはさておきとしても、ジンを思わせるその長い銀髪にセフィロスをなら手放しで信用しますなんて気にはなれなかった二人だが、そこは短くない時間を共にしていったことによりそういった気持ちは薄れていく事になった。ジンとは明らかに違うその行動の仕方や、その性格や立ち居振舞いを見る形でだ。

これに関してはセフィロスの人格が一際良かったというより、ジンがあまりにも裏社会の人間としての立ち居振舞いや他者との接し方が苛烈過ぎるというのが大きかった。この辺りは裏社会をメインに生きてきたからこそ他者に愛想の笑顔や言葉を振り撒くような生き方などジンが一切してこなかったことが大きく、だからこそそんな愛想や容赦のないジンと普通に優しくだったり穏やかに接してきたセフィロスに好印象を抱かせたのである。同じ銀髪の長髪持ちでもこれだけ違うのかと。

・・・そういったようにセフィロスについてを好意的に思うようになっていった志保に降谷達だが、新一がよく志保に愚痴っていた中身はセフィロスに対する物が結構な割合を占めていた。それも何で俺の事を信用しないのかだとか、俺を自由にさせないのはおかしいといったように不平不満を同じように愚痴にしていく形でだ。

そんな不平不満を事あるごとに言ってくるからこそセフィロスの人格を知っていったこともあって、ウンザリとした気持ちを抱きつつ志保もそうだが降谷も新一にそんなことを言うなというように話していったのだが、それで大人しくというか不満が無くなる新一ではなく自分を信用だとか役に立てるのを何故認めてくれないのか・・・と愚痴愚痴言ってきたわけである。

そんな新一の発言に姿は二人や公安の面々からしたらみっともないだとか子どもの癇癪というようにしか映らなかったし、それこそ同じような銀髪持ちでもジンの方が気持ち良く敵意を向けられる分、ジンの方がセフィロスよりマシな存在だと思っているだろうと見たのだ。自分の要望を柔らかくいなしてしまう善人としての立場にいるセフィロスに対して、悪人でありろくに話をしたこともなく恨んでも構わない理由のあるジンの方がマシだと。









.
7/28ページ
スキ