恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 後編

・・・そうして解毒薬に関して作れるかもしれないという希望が出てきたことも相まって、新一は度々せめて少しは話せないかと訴えたりしてきたが、そこは志保が嫌がっているからでシャットアウトして終わらせた。これは志保が嫌がっている事は間違いではないが、下手に薬の進捗であったり試験薬であったりが出来ただとか手元にあるなんて話を聞かせるとか一緒にいさせるなんてしたら、どう考えてもろくでもないことにしかならないと見たからでもあった。

だからセフィロス達は新一には出来る限り情報を絞る形で事を進めていって、組織を壊滅させることが出来た上で薬も作って新一に飲ませて志保も飲んで元の体に戻ったのであるが・・・もう志保の中に新一に対しての気持ちは一切無くなってしまったのである。これ以降もう関わりたくないと心底からウンザリといった気持ちを抱える程に。






「まぁその辺りに関しては新一君がどうするかであって、僕達が関与することではありませんが・・・一応組織は壊滅したことで僕達と貴殿方の協力関係は終わりましたし、新一君は工藤家に戻ることになりましたが貴方はどうするんですか?アメリカに帰るんですか?」
「その事に関してだが、組織を追うことになったことで予定していた休暇が丸々と潰れたのでな。だから上の方から組織の壊滅の功もあるから、その分も含めて休暇を取るように言われている・・・だからしばらくは日本で休暇を楽しむことにする。ただ流石に工藤邸で過ごすなんて事をすれば新一の機嫌を損ねるだろうことは目に見えているから、どこかのホテルを使う事にはなるだろうがな」
「・・・ということはその間は一個人として日本に滞在するということですか」
「あぁ。だから俺の事を見掛けても気にしないでくれ。例え見掛けたとしても、日本に観光で滞在している話したことのある外国人といった程度で認識してくれればいいし、仮に何か事件が起きれば警察に任せるようにするからな」
「・・・分かりました。そういうことならゆっくり過ごされてください。一個人として日本に滞在するというだけで目くじらを立てるというのは流石に色々と大人気ないし、そんな方を冷遇すれば日本の評価を下げることになりますからね」
そこで続いてと降谷が今後の事についてどうするのかとセフィロスに問い掛けると、要約すれば何もなければただ普通に観光客として過ごすつもりと微笑を浮かべつつ返す様子に、ならいいとばかりに微笑を浮かべながら返す・・・今回は経緯が経緯なだけにセフィロス達と公安として協力をせざるを得なかった降谷であるが、プライドを始めとした考え方から他国の捜査機関が我が物顔で日本で活動することに関しては嫌だという考えは今でも変わっていない・・・のだが組織との戦いでセフィロスに大分世話になったこともあるが、機関に関係無い一個人として日本に滞在する外国人までもを敵視する程狭い心は持っていなかった為に。






・・・そうしてセフィロスももうやることはやり終わったと公安の施設を後にしていった。
「・・・行ったわね、彼。最初彼の姿を見た時はあの銀髪からジンを連想したけど、ジンとは比べ物にならない・・・いえ、比べることすらおこがましいレベルの人格者ね」
「そこに関しては僕もそう思いますが、それでも新一君は彼の事を受け入れがたいとずっと思うことでしょう。そういった事から考えるとむしろ敵として見ていたジンの方が気持ち良く敵意を向けれる分、自分のやりたかったことを邪魔されたけれど立場的に正義の機関に所属していて妥当な行動を取ってきた彼に対し、分かりやすい恨み辛みを向けるのは色々とみっともないと思うことからね」
「でしょうし、それが子どもっぽい考え方だなんて工藤君は思わない上で誰かに言わないでしょうね。端から見ていてそれがどれだけ分かりやすいかなんて思わずね」
そうして志保と降谷はセフィロスと新一について話し合うのだが、二人ともに新一に関して呆れを滲ませていた。セフィロスに対して抱いているだろう幼稚な感じ方や考え方に。









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