恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 後編

自分達の扱いが酷い・・・新一はそのように漏らしていたが、なんの事はなくこれは単純に新一もそうだが志保に関してを衆目に晒させないようにと、公安の持つ施設内で外に出ることを許さない形で生活してもらっている事に関して言っているのである。少しくらい外に出して欲しいという要求すら通らないということに。

確かに一見それだけなら少し外に出ることくらいはいいのではと思うかもしれないが・・・その時はもう『江戸川コナン』は転校して何処かにいったものだという措置を取ってあり、小五郎の元から離れたともしていたのだ。その上でオマケに言うなら阿笠の発明品も全て没収済みという状態にあった。そんな状況で外に出て知り合いに出会うこともそうだが、何よりそこで事件に出会すような事があれば・・・特に後者の事を考えれば、新一を外に出すなど有り得ない選択としか言いようがなかった。後者の状況になればいくら止めようが新一は事件を解決するためにというか、解決しなければ収まらないというように動くのは簡単に目に見えていたからだ。

だが後者もそうだが前者もそんな事を起こしてしまったなら、その時点で新一を人目から離した理由が無くなるどころか、新一の性格から考えれば今度はもっと上手くやるからというように言い出して、公安の誰かを第二の小五郎のようにしていたことだろう・・・自分がやらなくてどうするのかといったように言いつつ、その実として閉塞感のある空間から解き放たれて自由にやりたい・・・それこそ何を言われても軽く悪い悪いと謝るだとか、結果的に成功したんだからいいじゃないかというように結果論だけで済ませようとする形でだ。

しかしそんなことを起こさせてしまえば小五郎の時の二の舞どころか、新一の性格上もう自由に出来ない空間に戻されまいといった考えから何らかの打開策として考えた行動を取りかねない・・・そういったリスクも有り得ると見たから公安側としては新一を特にという形で外に出さないとしたのである。志保に関しては自身が外に出て何か不都合が起きるのは不本意だからという考えから、新一より断然に危険性は低いというように対比で見られる形でだ。

だがそういった理屈は分かりはしても、感情は全然理解しないというか追い付いていない新一がやったことは、自分に近い位置にいて経緯は異なれど同じく小さな体になった志保に不平不満を主に話していくという物だったのだが・・・その熱量の凄まじさもそうだが、何よりその頻度の多さに志保が参ってしまうことになったのである。言うことは分かるけれど自分達の事を信じて欲しいといった事ばかりを言ってくることにだ。

だから志保のそんな訴えの声を受けて降谷やセフィロス達はすぐに志保を新一から離す事を決めた上で、新一に色々と話をしていった。主に新一が自分の気持ちの為だけに志保の気持ちを関係無いだとか自分と同じだろうというように考え、自分の考えやら気持ちやらを顔を合わせる度に頻繁にぶつけていったのは志保の事を考えたものでは到底ないものだといったようにである。言いたいことはともかくとしても、あまりにも何度も繰り返し話される話の中身や変わらない熱量に志保が心底からウンザリといった気持ちを始めとした考えになるのは当然だろうと。

こういった言い方をしたのは新一が悪いというように言ってもこういった気持ちを抱くのは当然だろうと悪びれもしないだろう事が予測出来たから、志保の気持ちやらを考えない行動だったことから不快に思うのは当然だろうというように言う方がまだ話を聞くと見たからだが、実際に効果があって流石に新一も志保を不快にさせたということに苦い顔を浮かばせた。

だがそれで悪かったのは分かったからで謝られて、また同じように近い位置で過ごす・・・なんて事は志保が嫌だと言ったことから、以降は新一との距離を離したまま志保には過ごしてもらったのである。ただ志保に謝りたいというように新一は言ってきたが、志保が自分が言っても聞かない工藤君と近くにいるのはもう嫌だというように言っていいからということで、そう伝えて新一をうなだれさせて終わらせたのである。セフィロス達から見ても率直に志保が嫌がっていたと言わなければ、新一は諦めの悪いことしか言わないのは想像が出来た為に。









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