恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 前編

「否定したいけれどそう出来ないだろう?・・・実際に私達も似たようなことが起きれば十中八九どころじゃなく、まず確実に新一が誰にもバレないようにして動こうとするだろうと見ている。新一の性格に行動パターンから考えればむしろそうしない方が有り得ないと言ってもいいだろう」
「っ・・・!」
優作はそんな蘭が何故言い淀むような様子なのかを自身らの予想もこうだと口にし、その言葉に否定出来ないとばかりに辛そうに顔を背けた。






・・・新一が気になったことに関してを一人で行動して解決したいという癖があるのは蘭もよく知っているというか、そもそも体が小さくされたのもそうして新一がその男達を見て気になったというのを誤魔化すように動いたからだ。そしてその結果が今までの事であったと考えれば、何かあっても新一が蘭や他の人達に話をするのは想像出来ないとなるのはある意味当然であった。

だがそういったように考えられはしても新一を庇いたいという気持ちがあるから、優作の言葉をどうにか否定したいと思いはするのだが・・・前例があることもそうだが何より新一の性格を考えていけばいくほど、新一が勝手をせずに大人しくしてくれるとは思えないから黙るしかなかったのである。それくらいには新一の我が強くてそんなことしないとは言えないことを蘭も考えたのだ。






「ただこの問題に関してもっと突っ込んだことを言うなら、せめて何かが起こって秘密裏にでも私達に報告するくらいの考えがあるならまだしも・・・自分一人でどうにかすると誰にも秘密にするばかりか、それこそ一人でやることと毛利さん達を何も言わずに利用してきたようなことをイコールで繋げるような活動をしかねない危険性が有り得ることにある。特に蘭ちゃんはこれが自分の事であって新一の事を少なからず見て悪からずというように思っているからそのように言ったが、もしそういったことをする時に私達の目を掻い潜るためにとここにいない近しい誰かを巻き込んで使うことを思い付いた上で・・・もしバレた時にその人物が新一を許せないとなった時がある意味では最も危険なんだよ。話の流れから許す許さないはまだともかく黙ってくれるとは毛利さんも蘭ちゃんも了承はしてくれたが、もしその人物が黙ってくれないし動くとなったならどう納めるのかという話になるからね」
「っ!?」
だがそれで更にもしもの状況を仮定していく優作が話していくその中身に、蘭は予想外の角度からの話だったためにたまらずに息を詰まらせた。自分達ではない誰かを新一が巻き込んでしまった場合、その誰かが新一のやった事を許さない可能性が有り得ると突き付けられた事に。
「・・・今言ったことに関してはあくまで極論ではあるが、新一は探偵として自分でやりたいという気持ちを捨てられない事は確かだ。そしてもしそういった私達を頼らないばかりか誰かを利用するような行動を取ったなら、最早新一が可哀想だからという言い分は通用しないどころじゃない。その時はもう私達は新一を擁護しないどころではなく、本当の意味で自分で全部どうにかしろと突き放すことを選ぶ・・・例えその時に新一が金を持っていなかったり学校に通っていたりしてもだが、今の体のようなとんでもないハンデを背負ってたとしても家から追い出す形を取ってだ」
「なっ・・・!?」
「二度あることは三度あるだとか三度目の正直といった言葉があるが、こんなことはもう一度すらあってはならないと思ってだ。そして今の話は元に戻らない場合でも元に戻ったでも話す予定だが、それでもそうすると選んだ場合の話はしておくようにするが・・・これに関してはもしまた同じような事が起きて同じような事をしかねない場合に新一を躊躇わせるための単なる脅しでも警告でもなく、本当にそうしたならどんなに謝ろうが何を言おうがそうすると選ぶとも言わせてもらう。そこまで言ってもそうしたならもうそうされることを覚悟の上でやったことなのだと断じる形でだ」
「そんなっ・・・!」
そんな話は極論だと付け加える優作ではあるがそれでもそうしたならと苛烈でいて断固とした処置を取ることをハッキリと口にしたことに、蘭はたまらず涙を浮かばせながら言葉を詰まらせてしまった。話の流れから完全に意気を削がれてしまっていた蘭はどうにか反論するためのメンタルとは到底なれない状態になってしまっていて、その中身に圧されたのもあったために。









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