恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 前編

「・・・蘭。お前、分かってて言ってるのか?俺だけじゃなくてお前も何も言われずに騙されてきたんだぞ。俺は話を全部聞いて新一に対してさっき言ったように殴りてぇっていうように思った・・・てめぇがやりたいようにやるためにと俺らを騙し続けることを選んででもと聞いた時は尚更にだ。そしてそう聞いたのはお前もな筈なのにまだあいつを庇おうってのか?俺のみならずお前にも事実を言う気はないって判断されてのけ者にされたってのにも関わらずだ」
「そ、それは・・・た、確かに話を聞いた時は私に言って欲しかったって思ったけれど、話を聞いていく内にそんなに新一の事を酷く言わないでいいじゃないって思っていったの・・・確かにやったことについては良くなかったかもしれないけれど、だからってそこまでする必要ないって・・・」
「だったら新一にどうするだとかどうしてもらうことが妥当だってんだ?優作さん達が親としての責任をちゃんと踏まえて動くっつってるのに俺は納得したが、お前はどういうようにするのがいいと思うか・・・ちょうどいい塩梅だって思えるような答えを言ってみろ」
「そ、それは・・・こ、今回の事は新一があんな体になるなんて思わなかったから色々と追い詰められたんだろうし、新一も元に戻って帰ってきたら流石に反省するだろうし私もきつく言うから、もう新一にそんな厳しいことを言うのは止めるでいいじゃない・・・」
「・・・要はお前からすりゃそれくらいで済ませて欲しいって事かよ・・・新一が辛くないようにしてほしいし、自分が聞いても辛くないようにって風にしたいってだけの答えしかねぇってことか・・・」
そうして小五郎が手をどけて視線を合わせて静かに問い掛けるように話をしていくのだが、その静かな圧に圧されどもりつつも答えていくその中身を受けて脱力するように頭を下げた。いや、下げざるを得なかったと言っていいだろう・・・蘭が口にしていった言葉は理屈でもなんでもなく、ただ新一がキツい目に合うのを見てられないだけという極めて自分本位でいて子どもっぽい感情論以外の何物でもない答えだった為に。
「・・・こんな流れにしたかった訳ではありませんが、私が言いたかったのは蘭ちゃんが思っているような事にはする気はないということだったんです。あくまで私としては毛利さんのように軽々しく新一を許せないという気持ちと蘭ちゃんのように庇いたいという事の意見の対立があるだとか、どちらか片方の意見・・・それこそ庇いたいという意見であっても私達が出した結論についてを変えるつもりはないと強調して話をするに留めるつもりだったんですが、蘭ちゃんがこう言うとは・・・」
「・・・いえ、それは優作さんのせいじゃありません。話を聞いても新一を庇いたいだけで蘭が発言したんであって、それでもと蘭があぁいうように言ったのが原因ですから・・・」
「ちょ、ちょっと待ってください優作さんにお父さん・・・そんなに新一を庇いたいって思うことは、駄目だって言うんですか・・・?」
「庇いたい事が駄目だと言っているんじゃない。再三言うようだが甘やかすようなことをしないと言っているんだよ。というよりそういった考えや気持ちから新一の行動を許してしまえば蘭ちゃんは言い方は気に入らないかもしれないが、似たような事があればこういったように考えて動くだろう事が想像出来るからそうしないと決めたんだ・・・今度はもっとうまくやって誰にもバレないようにするし、もしバレてもまた謝るかそのバレた誰かに黙ってもらって目的を達成するまで動こうというように考えるだろうとね」
「そっ、そんな・・・そんなこと・・・!」
「これは新一が私達に毛利さん達に後で謝るから黙って利用される事を認めてくれと頼んできたことから言っているんだ。これに関してそうするかしないかがハッキリしてないから蘭ちゃんはそうしないと信じたいだろうが・・・私達は新一がそうする可能性が高いと見ているからこそそうさせない為に動こうとしているんだが、もし仮に蘭ちゃんの気持ちを優先させて言ったようにして新一がそうしたとしたなら・・・私達も私達で何をしているのかという事になるが、蘭ちゃんはまた同じように次はもうやるなというだけで済ませるでいいと思うかもそうだし、それで新一が今度こそは言うことを聞いて大人しくしてくれると思うかい?」
「そっ・・・それ、は・・・その・・・」
そこで優作は割り入るよう申し訳ないと口にして小五郎も沈痛といったように返す様に蘭は庇うことが駄目なのかと切実そうに漏らすが、優作がそこで口にしていった新一の事についてともしものシチュエーションに関しての問い掛けに、何か返したそうにはするが言葉を詰まらせて視線をさ迷わせるしかなかった。









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