恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 前編

「蘭ちゃんがどういった考えからそんな反応なのかは気になるが、何かあれば駆け付けるからというようにしたことが何の問題があるのかということだが・・・まずこれに関して起きたことから言わせてもらうと、そもそも新一の性格もあって困った事があっても自分の力で解決しなければ気が済まないという性分を私達は考えていなかったんです。だからこそ新一は私達を頼るのではなく自分でどうにかしようと、私達に何も言わずに毛利さん達を利用するような行動を取ってしまった・・・この事に関しては本当に改めてすみませんでした、毛利さん・・・」
「・・・別にいい、とは言えません。ただまだ何かあるような言い方が気になるのでそれを話してください。起きたことからと今言いましたが、そうでないなら問題が何なのかを・・・」
「・・・分かりました」
そんな蘭については置いておいてと次の問題点についてを話す中で優作は小五郎に頭を下げるのだが、何とも言えない様子ながらも先が気になると口にしたことに頭を上げつつ了承を返す。
「・・・今私は起きたことというように表現しましたが、少し私達はもしもの状況を仮定してみたんです。もし私達が日本に帰らないままでいたならであるとか、新一が思うようにその男達を捕まえて元に戻ったならということを・・・ただそのもしもの未来に関してを想像していけばいくほど親として言ってはいけない事というのを承知で言いますが、ろくでもない未来になるとしか思えないという話になりました」
「・・・ろくでもない未来?」
「簡単に言うならその男達を捕まえたことを言い触らすであるとか、誇りにするという未来です。自分があそこで奴らに襲われたのは奴らによる被害者になった訳じゃなく、奴らを自分が捕まえろと啓示されたきっかけだったと今なら思える・・・というように言う形でです」
「はっ?・・・あ~いや~、それはなんつーか・・・ご都合主義な考え方っていうか・・・」
「ハッキリ言ってもらって構いませんよ、毛利さん・・・もし新一は自分のやりたいようにやれたなら、新一は自分が探偵として偉業を為したんだと言葉は取り繕いはしても、本質的には小さな子どものように自慢するだろうと私達の間でも出ましたから」
優作はそこから新一がいかな風にしただろうかについてを話していくのだが、小五郎はその中身にどう言えばいいかと複雑そうにしていた様子に少し寂しげに息子に向けるには辛辣な言葉を放った。子どものように自慢する形で動くだろうと。






・・・話の中で出てきたが、そもそも新一の性格を考えれば困難な状況に陥っても優作達に助けを求めるなどまずないというのをセフィロスと話し合って優作達は認識した。もしそんなことがあったとしたなら今回のように体が縮んだだけと言ってはいけないが、それでも一応新一は五体満足でいられていることから優作達に助けを呼ぶことはなかった・・・だがもし体が縮まるかそうでないかだとか組織による被害かは関係無く入院が必要な程のダメージを負っていたなら、いくら新一でも優作達を呼ばざるを得なかったことだろう。体が小さくなっていた場合でもそうだが、組織の人間は関係がなくて悪意も一切ない純然な事故の形でとなっていたら尚更にだ。そんな状態になっているのに入院の際にやるべくことの諸々は肉親である優作達がやらなければならないことであり、二人を呼びたくし何も報告したくなんかないからそういった諸々の事は阿笠や小五郎達にやってもらう・・・なんて事をしようとしたらそう考えた新一を筆頭に非難轟々となるのは間違いなかったことだろう。そもそも入院となれば余程の事情アリでなければ肉親が手続きをするのが妥当だから、そう出来るかはまた別物としてだ。

ただそれでも新一がそれくらい優作達に助けを求めるような事は選びたくないだろうと予想が出来るくらいには、新一は一人でやろうとすることの体裁にこだわると見たのだ。優作達から一人で暮らしても大丈夫と見られたから今の生活を切り出されてそうすると決めたのだということもあるが、自分一人で思うようにやりたいという気持ちから出来る限り否定したいと。そしてその考えに拍車をかけているのが新一が探偵というヒーローとして在りたいし、見られたいと思っている事にあった。









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