恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 前編

「・・・だがそんなことを言っても過ぎた時間は変えようがない。だからこれからの事についてを話し合いたいのだが、取り敢えず言いたいこととしては毛利さんの元から離れろ新一。これからは私達がお前の身を引き受ける」
「なっ・・・!?」
「どうしてだとか自分でその男達を追いたいというのがお前の言い分になるだろうことはその様子から想像はつくが、私達の立場から見ればそんなことを認めればお前の勝手で毛利さんをずっとお前の操り人形のような形にするんだぞ。事実を知りながらだ・・・仮にお前が私達の立場に立ったならお前のやろうとしている事の為に、毛利さん達を騙し続ける事を推奨するというかそうするべきだと自信を持って言えるというのか?」
「っ・・・!」
しかし優作がそこで表情を引き締めてこれが本題とばかりに自分達が新一を引き受けると言ったことに驚きと理解出来ないといった様子になるが、続けられた優作達の立場についての諸々を聞いて否定出来ないと息を詰まらせるしかなかった。いくら新一でも優作達の立場に立ったらそうするのが正しいなんて言える筈がないと・・・だがそこで新一はたまらず下を向いたかと思えば、すぐに緊迫した様子で顔を上げた。
「・・・言いたいことは分からねぇ訳じゃねぇよ父さん・・・でもこれは俺の事件だ!おっちゃんや蘭には悪いと思うし謝れって言うなら全部終わったらいくらでも謝る!けれどこれは俺が解決しなきゃならない事件なんだ!だから二人からしたら嫌かもしれねーがこのままにしてくれ!」
「っ・・・新ちゃん、それ本気で言ってるの・・・!?」
「本気だよ・・・謝って済むならいくらでも謝って済ませる!でも俺が元に戻れる可能性はあいつらを捕まえてあの薬を手に入れる以外にねーんだ!だから俺に自由にさせてくれ!」
「「っ・・・」」
・・・そうして新一から出てきたのは理屈としての納得ではなく、むしろ真逆の感情からくる拒否であった。
最早なりふり構ってられないとばかりに自分の言うようにしてくれと叫んだ新一に、何でとばかりに声を漏らした有希子は手で口を抑え優作はたまらず額に手を当てた。
「・・・昔の私達ならお前のそんならしさの見える様子に折れていただろう。だが今の私達はそんなことを許す気にはならない・・・すまない、入ってきてくれ」
‘ガチャッ’
「っ!・・・ジ、ジン・・・じゃない・・・」
「あぁ、君からすれば長い銀髪は嫌な思い出だろう。何せそんな姿にしてくれた張本人の特徴なのだからな」
「ジ、ジンを知っている・・・?」
そのまま優作が脱力気味に入るようにと言葉をかけるとすぐにドアが開いてセフィロスが入ってくるのだが、新一がたまらず戸惑いに身を揺らす中で微笑と共にセフィロスが口にした言葉にどういうことかと戸惑いを浮かべる。
「彼はセフィロス・・・先程言った私達が日本に帰ると決めたきっかけの人物であると共に、とある機関に所属している。そして博士から話を聞いた後で彼は新一を小さくした人物達は日本だけでなく、海外でも活動していてマークしている悪質な組織であると教えてくれたんだ」
「や、奴らの規模はそこまでだっていうのかよ・・・!」
「話を聞く限りではかなり手広くやっているとくらいしか聞かされてはいないが、それだけに彼の所属する機関もマークしているそうだがそこは重要な事ではない・・・彼がここに来たこと自体は私達が日本に帰ろうと思ったきっかけをくれたことに対してのもてなしをするためであるが、博士から話を聞いたことによりこの件に関してを見過ごすわけにはいかないと判断したとのことだ」
「は、判断したって・・・」
「済まないな」



‘ガッ’



「ぐっ・・・!?」
・・・そうしてセフィロスの説明をしていた優作に新一は戸惑いを隠せないままに視線をさ迷わせていたのだが、一つの軽い謝罪と共にセフィロスは凄まじい早さで新一の後ろに回り腕を取って地面に押し倒した。









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