恵まれた環境にあれば完全なヒトとなり得るか 前編

「・・・ということから新一はこの家にはいないで、正体を話さないまま毛利さんの家にいるとのことだ」
「・・・新ちゃん・・・」
・・・そうして一連の流れを説明し終わる優作に有希子はなんと言っていいものかというような様子になり、セフィロスも額に手を当てて沈黙するしかなかった。荒唐無稽な話の中身もあるが、その行動の仕方についてに。
「・・・色々言いたいことというかやりたいことはあるかもしれないが、一先ずはこれからどうするかを話し合いたい。流石にそんなことを聞いてしまっては私達もどうにかしなければならないだろうからな」
「・・・どうするも何も貴方達の子どもと会って話すことは絶対にやらないといけないことでしょう。ただその前に聞いておきたいのですが、その阿笠という人物には子どもへ貴方達が帰ってきてると連絡をするといった様子はありましたか?」
「そこに関しては黙っておいてほしいと言っておいた。少し私としても色々と考えざるを得ない部分があったから、直接会う前に私達が日本に帰ってきていると新一が知ったならこちらに対して日本に帰らず向こうにいろと言ってくることを始めに、色々と面倒になるだろうと見てね」
「あぁ・・・新ちゃんならそういった事を言いそうだし、私達を遠ざけそうね・・・自分の問題だから自分だけでやらせてくれって・・・」
「そうだ。だが今のままの活動を新一に続けさせてもいいことになるとは思えないから、これから少し話し合おう。この件に関してどのようにした方がいいのかを冷静にだ」
ただそれでも優作が冷静でいて強い意志を持つように新一達について向き合うと告げる様に、二人も自然と表情を引き締めて話に集中していく・・・



















・・・それで数日の時間が経った。



「・・・おい、何だよ博士・・・わざわざ学校にまで車で迎えに来るなんて・・・」
「その事じゃが・・・優作君達が家に帰ってきたんじゃよ」
「な、何だって!?父さん達が!?」
・・・とある男達に体を小さくされた事から、下手に怪しまれない為にも偽名として名乗っている『江戸川コナン』として小学校に通っている新一。
そんな新一は迎えにきた阿笠の車の後部座席に乗って何故と問い掛けるのだが、難しいといった様子で優作達の帰還についてを告げると驚きの声を上げた。
「わしもいきなり二人が帰ってきたから驚いたんじゃが、話を聞いていくと二人は事情があって日本に腰を落ち着けるために帰ってきたというのと、新一はどうしているのかということを聞かれて下手に黙ってられんと思って新一の身に起きたことを説明したんじゃよ・・・優作君を相手に下手な誤魔化しなど通用しないと思ったのもそうじゃし、仮に誤魔化せたとしてもしばらく日本におるというのにいつまでも誤魔化し続けられるとはとても思えんかったからのぅ・・・」
「それで博士は二人に事実を話しちまったってのか・・・」
「もう黙る事なんか出来るような状態じゃなかったし、済まないとは思っておる・・・ただ二人からはそんなことが起きたならその時にすぐに連絡して欲しかったと強く言われ、わしも二人にくらいは言っておくべきだったと思ったんじゃ・・・今回のようにいきなりあの二人が帰ってくることについてを考えてなかったからこんなことになったと思うとのぅ・・・」
「っ・・・そう考えると何で言ったんだって言えなくなるじゃねーかよ・・・」
そうして何が起きたかについてを語る阿笠に新一は何故話したとばかりの批難めいた声を漏らすが、続いた声に言葉を詰まらせ仕方無いというように漏らすしかなかった・・・実際新一としては二人が帰ってくる前に何事も起こってないといったように全てを終わらせたかったのだが、二人が日本に帰ってくる時は律儀に連絡してくる事がない上に帰るにしてもランダム性が強い事を思い出し、それらを自分も考慮していなかった非を感じた為に。









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