こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

そうしてしばらくの時間を恭弥は過ごすことになるのだが、英理の見立て通りに新一達は周りへの助けを出せないままに互いの関係をどうするのかということに四苦八苦するようになっていった。この辺りで四苦八苦するのは今からやり方やら考え方を変えるにはもう年齢が行き過ぎて頭が固くなっていることから、今までの態度やら考え方を改めますなんてやることは容易いことではないからだった。特に新一はどうにか頑張ろうとはしたものの、持ち前の事件や謎を引き寄せる体質は未だに健在なのと依頼とあれば断るなんて有り得ないという考えから、結局は長い時間蘭や工藤の家から離れる事は止められなかったのである。

ただそれでも英理の切なる言葉が効いているからこそ、今の状況が保持されたままの状態なら決して周りに助けを求める事は出来ないだろう。そして還暦を越えて最早新一の体がうまく動けなくなる時まで今のままが続くだろう・・・恭弥達にもう助けは求められないという苦しみと共に・・・




















「・・・ねぇ、綱吉君にユニちゃん。もうこの辺りでいいんじゃない?ここから先の結末はもうある程度想像がつくしさ」
「そうですね、そうしましょう」
「ここまで来るともうね・・・」
・・・場所は変わり、風紀財団本部のとある一室内にて。
白蘭と綱吉とユニの三人が三角形の形で目を閉じつつ向き合っていたのだが、白蘭が唐突に目を開けてヘラりとした笑みを浮かべつつ止めようと切り出したことに、同じように目を開けて頷き返した。綱吉は若干苦笑気味だが。






・・・この三人が何をしているのかと言えば、かつて持ち合わせていた力の残滓を使っての平行世界の恭弥達を覗き見だ。ただこんな力が使えるなんて有り得ていいのかと思うかもしれないが、前世ではその力はとある道具達を使わないと出来なかった上に平行世界を覗き見るなんて規模なんか比べ物にならないようなことも出来たものだ。

それに比べれば三人が平行世界を覗き見るだけ程度の小さな物・・・と思うかもしれないが、今は道具が手元にない上に前世での力はほとんど残っていないのだ。それでもそんなことが出来るのは三人が道具に選ばれし者達の代表であったことからであって、三人揃えば後で疲れがドッと押し寄せてはくるが覗き見が可能という事から、白蘭が平行世界を見ようと切り出したのである。こっちでは恭弥が新一達をハッキリと拒絶したが、そもそもあの二人がずっと続く可能性があるとは思えないからそれを確かめてみようと。






(・・・やっぱり予想通りだったか。まぁ恋は変にならないと出来ないって言うけど、この場合どうなるのが良かったのかな?ずっと変なまま恋してる方がいいのか、中途半端に変じゃなくなって迷う方がいいのか、はたまた完全に変じゃなくなって相手に対して何かをするのがいいのか・・・まぁあの二人がどっちかだけでも完全に変じゃなくなるなんて想像が出来ないけどね)
それで二人の後につくように歩く白蘭だが、その内心ではこれ以上平行世界を覗いても違う結末などないだろうなとほくそ笑んでいた。あの二人はまず平行世界を見てももう救いようがないだろうと・・・



















・・・可能性はあくまで可能性に過ぎない。だが可能性は起きる事が有り得る物であり、一つ違えば起き得た事である。今回はその可能性の一つを見た話である・・・









END









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