こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

『まぁそうして二人を呼び出して話をしてもすぐに納得してくれるとは私も思っていないから、一度で終わらせるのではなくその次まで考えて来るようにさせるようにして二度目の話し合いで結論を出すようにとさせるわ。そしてその中身がろくでもないものだったらもう私達に貴方達のイザコザに今後巻き込むなというように強く言うし、門前払いといったようにするわ』
「もうそれでいいでしょう。考える時間を与えたのなら文句を言われる筋合いはないと言えますし、それで尚もでもでもだってとごねたり納得が出来る結論が出ないなんて言われてもこれ以上付き合いたくないからそれが妥当だと思います」
『そう言ってくれてありがとう、恭弥』
それで最終的にこうするつもりでいると話す英理に恭弥も賛成だというように返すと、少し安堵したといったような声が返ってきた。
『取り敢えずそういうわけだから後は私に任せて、恭弥。終わったらどうなったか説明するようにするから』
「分かりました。後はよろしくお願いいたします。ではそろそろ時間も遅いですし、電話を切りましょう」
『えぇ、じゃあね恭弥』
そして話をまとめた所で恭弥が終わろうと切り出し、英理も了承して電話を切り・・・電話が切れたのを確認してから恭弥は電話をしまいつつ、極めて面倒そうに表情をしかめて目を閉じた。
「・・・いっそ今からもう一度あの中に戻って、噛み殺したくなるね・・・」
そしてそっと端から聞けばとんでもなく物騒な事を殺意すら漏れてるのではというように口にするのだが、その言葉通りにはせずに目を開いてからバイクに視線を向けて帰る準備に取りかかる。ただ明らかにその雰囲気には不機嫌さが漂っていて、あまり近寄りたくないと思わせるようなオーラが見えるようだった。






・・・恭弥からしてみれば新一に蘭の二人は親として尊敬出来ないし好ましいと思ったこともないが、それでも親という立場にあることや善人ではあるのだからから見知らぬ他人に対してよりは情はあった。だがその情がハッキリと薄くなっていったのは自分の為に蘭を説得してくれと言われた時からであった。

一応自分だけでなく英理を始めとした周囲の面々も新一達の事に呆れだとか失望だといったような態度を見せていたし、自分もそういった気持ちを抱いていたのは確かではあったし同意するような言葉を口にしたり態度を見せてもいた・・・だが新一や英理を相手にしても態度にも出さずに口にしなかったことがある。それは暴力を匂わせるような明確な強い怒りだ。

・・・前世の恭弥だったら素手どころかトンファーで遠慮も躊躇いもなく、新一を思い切り殴り付けた事だろう。あまりにも甘ったれた考えから来る行動や要望に僕を巻き込むなとだ。しかし綱吉達と違い記憶が戻らないまま生きてきてこの平行世界での生き方を続けてきたからこそ、そんな手を出すというようなことをしまいという考えで耐えていたのだ。新一を殴り付けるような事をすれば風紀財団を立ち上げた意義が様々な意味で一気に壊れてしまうと。

だからこそ恭弥は新一に会う度に出来る限りは怒りを表に出すことなく抑えてきたが、先程にその怒りが漏れ出るくらいにはもう恭弥は新一の事を見知らぬ他人以下の存在と思えるくらいにはなっていた。事件を解決した時は未だにキメ顔にキザなセリフを平気で吐くのとは対照的に、自分達の前では蘭の気持ちも離したくないし探偵としてずっと動きたいと、もうどちらかを切り捨てなければその片方も得ならないということを選べないどころか、考えることも出来ていなかったあまりにも情けない新一のザマに・・・









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