こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

「・・・僕から言えるのはここまでだ。ここから先は貴方と母さんの二人で話し合わないといけないことであって、僕は選択肢としてどうしようもないなら離婚もありなのではないかとは言ったが、それを強制する立場に僕はいない。どうするかに関しては二人の場で決めてくれ」
「ま、待て恭弥!どうしてそんなことを言うんだ!?お前は俺達に別れて欲しいとでも言うのか!?」
「・・・はぁ」
それで恭弥はもうこれで終わりとばかりにまとめて立ち上がって入口に行こうとするが、新一が慌てて行くなとばかりに手を出しながら声を上げたことにウンザリとした表情を浮かべながらタメ息を吐く。
「・・・言っただろ、どうするかは二人の場で決めてくれと。その結果として貴方達が別れるのならそれを結果として僕は受け入れるというだけだ」
「そういうことを言ってるんじゃない!お前は俺達が別れる事になるのを何で許容出来るような事を言えるんだ!」
「っ・・・子どもとして親の離婚を避けたくないのか、みたいに貴方は言いたいんだろうけれど・・・甘ったれるな」
「っ!?」
恭弥はそのまま仕方無いという様子を隠さず言葉を口にしていく中で、新一はさも親を仲良くさせようとしないのかと批難めかせた声を向けるのだが・・・明らかに苛立ったように目を細めた上で静かだが今までにないプレッシャーのこもった声が返ってきた事に、ビクリと体を大きく揺らした。探偵として動いてきて数多の危機や圧力に身を投じて慣れていた筈の新一が迫力負けする形でだ。
「・・・一応僕ももう三十を越えているし、貴方達も五十を越えているいい大人だ。その上で僕はあの家を出て独り立ちして長いというのもあるが、そもそも貴方達は僕が中学の頃からあの家を出てほとんど家に帰らない生活をしてきただろう。そうしてたまに家に帰ってくる時間を含めて二十年を越える時間をろくに家に帰らず将来の事を考えずに過ごしてきた貴方が今更自分達・・・いや貴方からすれば貴方の思うような風にしたいからと僕に助けを求めるのもそうだが、家族だからなんて文言を使ってでも協力を求める・・・これがどれだけ貴方が自分本位で自分のやりたいようにするためだけの物なのか分かってて言ってるのかい?」
「そ、それは・・・というか帰ってきてない時間は関係無いんじゃないか・・・?」
「一般的な家庭において親離れだったり子離れだったりで家を離れるなどして共生する時間が終わってその期間が長くなれば長くなることもそうだが、以降に援助や交遊や連絡といったものがないという状態が互いに続いたなら、普通はもう自分もそうだし相手も大丈夫と思うことが多いものだよ。頼りがないのは元気な証拠だというように言われるようにだ・・・ただ貴方用に付け加えると一年二年程度ならまだ意地から大丈夫だとかどうとでも言える時間だが、二十年もの時間が経っていてどちらからでも大した連絡がない状態だというなら、貴方達の年齢もあって普通なら遠くない未来について考えるんだよ。自分達の引退だとか後の余生をどのように過ごすのかに関して、自分がこれからもこうしたいからお前も協力してくれなんて風に巻き込むなんてことはせずね」
「うっ・・・」
そこから面倒だという様子を隠しもしないながらも丁寧に普通ならこうしないと皮肉をきかせた言葉達を恭弥が向けると、新一は苦そうに声を詰まらせるしかなかった。事実、新一は後の事を考えてなかったのは確かだったのは否定出来なかった為に。









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