こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

・・・恭弥は容赦や遠慮なく言ったが、実際の所として新一の思考や行動の仕方は真と比べると真逆な物と言って差し支えない物であった。これは個人で探偵業務を行っている新一と、財閥の人間として何万単位の人間のトップという立場にいるからこその違いであった。そしてだからこそというべきか引き際についてを見極めるだったり考えているかに関しての差が出るのも・・・というか、そもそも新一の考え方があまりにも一般的な価値観から離れている事が原因であった。

これは新一はどれだけ人聞きが悪いからと否定しようが、事件に出会い推理をすることが何よりの生き甲斐であり最早そうすることを止められない性質を持っているからだ。だからこそ新一は探偵として依頼があれば動いていき、事件が起きたり謎があればそれらに向き合ってきた。そしてそれらを解決することに何よりの充実感に楽しさを感じる形でだ。

新一当人はそんな人聞きの良くないことはないと否定するだろうが、恭弥からすればどう取り繕おうがそういうようにしか思えなかった上で、そんなやり方で誰かが後に続けるはずもなかった・・・いや、厳密には新一の活躍に憧れたといったように弟子入りやらを志願してきた者達は少なからずいたのだが、それらの人物はことごとくもう無理だと新一の元を去っていったのだ。一つ所に留まらずに活動し続けるという体力的な厳しさもそうだが、行く先行く先で必ずというレベルで事件が起きるか謎の解決を必要とされ、それらを苦に思うどころか楽しんでいるとばかりの笑みを浮かべる様子に、自分と新一の差をまざまざと見せ付けられるという精神的にキツくなる厳しさもあってだ。

だから弟子入りや見学などをしたいという事は言われても結局は長続きせず、後を継ぐような者など現れずに新一は何とも言えない気持ちを抱くことになっていたのだが、そうなったのはそもそもが新一もだが新一の周囲に推理が得意であったり事件に関わることを当然とする人材が多すぎたからというのが何よりの理由であった・・・普通に考えてみればそんな人物がゴロゴロ集まるなど有り得ない筈ないということを考えずである。

その辺りは恭弥には決して言えない昔の事もあってであるが、それも昔の事であって時が過ぎるにつれて各々の役割の為に元の場所に戻るであったり、新一当人も探偵として忙しくなるであったりで会わなくなっていったのであるが・・・そういった縁は薄くはなっても探偵になろうとする人物なら、自分やかつての仲間や友達と同じような人物だろうというように勝手に新一が見積もっていたのもあったからであるが、勝手にそういったこととイコールで繋げてしまった。そういった気持ちや考えが弟子入りしてきた者達を色眼鏡で見てしまい、そういった扱いや新一の在り方にそんな人物達は去っていったのだ。

だからこそ新一の後に続く者はいないままで新一は蘭こそ所々で付いては来るが、探偵としては一人のままで動いていく事を蘭からの言葉でも止める事がなかった・・・そんな生活を二十年以上も続けてきた上で体力にこそガタはきてもそれを止めるという考え方にならない新一では、それこそ恭弥の言ったように誰かに後を託すどころか車椅子に乗ってでも本当にギリギリ動けなくなるまで探偵として活動しようとするだろう。だがそれが蘭の懸念というのが今の話題の中心なのだ。









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