こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

「・・・何の用かな、父さん。こんな形で会いたいなんて」
・・・場はかつて大学卒業の際に祝いと称され、呼び出された料亭の一室にて。
そこに歳を取って精悍な顔付きになった恭弥は神妙な様子でうつむいて座っていた新一を見て面倒そうに声をかけつつテーブルを挟んだ前の座布団に座り、そこで新一はゆっくりと歳を取ってシワの刻まれた顔を上げたのだが・・・そこには複雑さを盛大に滲ませた顔があった。
「・・・この前、おばさんと蘭が話をしたことは聞いているか?同居しないかって蘭が言ったら、おばさんから自分達の歳の事についてを言われて断られたって話をだ」
「あぁ、聞いているよ。引っ越す経緯についてを話してくれた上で自分達のことは自分でやるから気にしないでいいというようにね・・・で、それが何?」
「何って・・・」
「おばあ様達からしたらおばあ様達なりの意志があったからそうした事だし、僕も話を聞いてその気持ちが理解出来たからその意志を尊重したんだ。それでそう聞いた上で貴方が僕を呼んでまで何を話したいのかが分からないから、何と聞いたんだよ。その事が主題とは分かるけれど、なら何を話したいのかとね」
「そういうことか・・・」
そうして意を決して新一が口にした声に恭弥は平然と答えていく中で、さっさと理由を答えろとばかりにテーブルの上の料理に手を出し始めた様子に苦い表情を浮かべる。
「・・・俺はお前に会いたいって連絡する数日前に家に帰ったんだが、そこで蘭が今までになく悩んでいた姿を見ていたからどうしたのかって聞いたら、おばさんとの話についてを聞いたんだ。そしてその後に蘭が言ったんだ・・・貴方はずっと探偵を続けるつもりでいるのかもしれないけれど、もう十年も経ったら私達還暦なのにいつまで貴方がこんなことを続けるのかと考えると、色々と不安になって仕方無いって・・・」
「・・・で、それを聞いて何を言いたいの?また僕にどうにか母さんを大丈夫だから説得しろというならこれ以上口を開かないでよ。僕も僕で忙しいというのもそうだけれど、僕や周りがどうこうじゃなく貴方が母さんの為に改善しようと動くつもりがないなら母さんからしたら何の意味もないんだからさ」
「い、いや違う・・・こうしてお前と会って話したい事っていうのは、俺は間違っていたのかどうか・・・その事についてを聞きたいんだ・・・」
「・・・はぁ?」
そのまま新一はいかな事があったかを語り出すが恭弥は大した興味を浮かべず料理に箸を運びつつ答えていくが、力なく自分が間違っていたのかと問う様子に何を言っているのかと心底から疑う目と声を向けた。今までの新一から出る言葉らしくないというよう。
「・・・最初そういったことを聞いて、俺達なら大丈夫だって蘭に言ったんだ・・・でも蘭はおばさんとの話から思わず園子に連絡してその時の事を信じられないみたいに話したら、おば様達がおかしいんじゃなくあんたに新一君がそういったことを考えてこなかっただけだって言われたらしいんだよ・・・園子もそうだが真さんもまだ働き盛りじゃあるけど、もう自分達の子どもだったり有望な人材を育てたり後を託す為の活動をしてる最中だって・・・」
「それはそうだろう。テレビに出るような社長や会長で六十どころか九十以上でまだ現役で働くような人物もいるが、今は六十五が会社や企業の定年という所が多いんだ。まぁ鈴木財閥の前例から考えれば会長なり相談役として財閥に残ることは有り得るが、真さんの性格を考えれば老兵は死なずにただ去るのみというように考え、後始末はちゃんと綺麗にした上で財閥を後にするだろう・・・そう考えれば貴方は後は自分は引いて誰かに託すみたいな人材なんか育ててないどころか、例え歩けなくなっても車椅子に乗ってギリギリまで探偵活動を続けそうに僕からは思えるんだよね。自分がやらなくてどうするんだとね」
「っ・・・」
新一はそんな様子のまま蘭が園子と話した中身についてを語るが、園子側の言ってる事が普通どころか真と新一の比較を平然と口にする恭弥に何とも言いがたそうに歯を噛み締めた。否定はしたいが否定出来ないというよう。









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