隣の芝が青いことの意味

「でもよく決心しましたね、毛利さん。ルルーシュの言葉があったからと言っても、蘭と離れる事についてを」
「・・・オメーらと色々話してく内に考えてたんだよ。俺と英理はこのまんまでいいのかってな」
「え・・・?」
カミーユはそこで改めて決断についてを口にするが、小五郎が上を見ながら思いを滲ませるように言葉にこそした中身にルルーシュ共々目を丸くする。そういった事を小五郎から聞くことがなかった為に。
「・・・俺が英理の事をまだ好きだって事には変わりはねぇ。だがそれだけで夫婦の関係が続かねぇから俺達はこうして別居中の状態になっちまった・・・正直、今のあいつが俺の何分の一でも同じような気持ちを持っているかどうかももう俺には分からねぇ・・・そんなだってのに離婚を切り出されねぇからこの状態に甘んじてていいのかもだが、英理が望んでるならもう離婚することも視野に入れた方がいいんじゃないかってな・・・」
「それは・・・」
「言っとくが、オメーらのせいだとかって訳じゃねぇ。ただ、ルルーシュの言葉がきっかけにはなった・・・別居して何年にもなるし、蘭に俺が望んだって英理が首を縦に振らなきゃどうにもならねぇ。そして情けねぇ話じゃあるが、俺にはもう英理を振り向かせたり元の関係に戻せる自信はもうねぇ・・・それならいっそ気持ちが残っていても離婚する方が俺もそうだが英理もスッキリするだろうし、不甲斐ない父親に見切りをつけるいい機会になるだろ」
「・・・それってつまり、妃さんに蘭の親権を譲るってことですか?」
そこから小五郎は自身の力不足を嘆きつつあえて苦しい判断をするといった言葉を漏らす様子に、カミーユが親権の事を重く尋ねる。蘭がいなくなってもいいのかと。
「・・・あいつらがそれでいいならそうすることにしようと思ってる。蘭は英理と気があってるからうまくいくだろうと思ってるし、もう弁護士としての地位も確立してる・・・蘭も成長してるし、資金面も問題はねぇはずだ」
「「っ・・・」」
小五郎は肯定しつつ英理なら大丈夫だと語るが、二人はその中身に息を飲む。と言っても本人達からすれば小五郎の決断が悪い物だからと言うのではなく、むしろ逆に近い物と考えているからだ。






・・・夫婦が離婚、もしくは別居という状態になれば大抵親権を持つのは母親になる事が多い。しかし小五郎は英理から親権を取って蘭を引き取った。

この事に関して小五郎に話を聞いた時は英理に対して意地になったからだといったように返したが、二人はその裏で小五郎が英理の負担を軽減するために敢えて強気になって英理から親権を得たと考えた。そうして別居にまで発展したのは元々英理が弁護士になりたいと言い出して引かなかったことからであり、結局それを止めることが出来なかった為にせめて蘭を世話する負担に資金面での苦労を英理にかけまいとする形を取ったのだと。

二人はこの考えは正しいと感じている上で、蘭に対する愛情も十分にあるとも感じている・・・だが成功した英理がどう思っているかは一回二回パッとしか会っていない為にルルーシュはハッキリとは分からないが、カミーユの感じ方としては小五郎に対して感謝と言った気持ちを抱いているとは思っていないと言った様子だった。むしろうだつが上がらない探偵として下に見ているといった気持ちが大きいと。

二人からすれば小五郎の影の姿も見てきた為に英理に対していい気持ちを抱くことは出来なかったが、それでも英理が弁護士として成功しているという事実がある・・・そう考えれば確かに小五郎の言うように蘭と暮らす上で資金面での問題は今はないだろうし、蘭を引き取る可能性も大いに有り得ると見ていた。蘭と相性はいいとは知っているし、小五郎が身を引くような事を言えば今まで培ってきた高いプライドも相まって、蘭を自分が幸せにするのだと言う形で。









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