こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

故にこそ英理は蘭にも新一にも説教というような形で話をしていった。百歩どころか何歩でもいいから譲って自分達が認められたと勘違いしていたこと自体はまだ良しにしても、今回の件が起きたことは貴方達夫婦が自分達なら大丈夫だと高を括っていたことの結果であると共に、普通では有り得ない生活を続けてきた事により起きた弊害であるというのに・・・新一は蘭をなだめてくれと恭弥に求めるばかりで自分が改善しようとしない姿勢を見せ、蘭は出ていく前には不満を持つようにはなったのだろうけれど少なくとも九年以上の時間を共に過ごしていたのに、今更になってうんざりだとか飽きたといったようになるだけで新一と向き合わずにただ出ていった性根は良くないという話を。

これらの話を受けて二人共に何かを返したそうにしていたが、勝手に許されたと勘違いしていたという部分もそうだが英理と恭弥の二人に説得を頼もうとしたこと・・・特に恭弥に対してどうにかしてくれと切り出したことは自分で蘭を説得しないどころか、むしろ丸投げしたことについてを告げると蘭までもから非難めいた視線を向けられた事に、新一はバツが悪そうに身を縮めるしかなかった。否定出来る材料もない上、蘭の機嫌を更に損ねる結果になった為に。

しかしそんな新一を責めるような視線を向ける蘭に対してすぐに英理が同じような事をしているのに偉そうにするなと言って萎縮させた上で、この話が終わったら蘭はウチにある荷物を持っていって工藤の家で暮らせと告げたことに新一共々驚きを浮かべたのだが、それが妥当だという理由を挙げていくと二人はまた否定を返せないといった様子になるしかなかった。

なら何を言われたのかと言えばまず第一に、恭弥は大学を卒業すると共に工藤の家を出て暮らすことを決めているということから、工藤の家に人がいなくなるから蘭が住むには十分であること。第二に妥当だとなる理由としてはどうせ今の新一は仕事に対しての姿勢を変えることはすぐにはしないだろう上で、問題が解決しない状態で蘭の待つ工藤の家に帰らないだろうからゆっくりとするには問題のない場所だということ。そして第三に妥当だとなる上で核となる理由は一応は離婚はしてないのだから、第二の理由も併せれば工藤の家で生活をする方が妥当だということからだと英理は告げた。少なくとも日本の常識に照らし合わせれば嫁ぐか婿に入った家で暮らすのは普通だし、新一と家を出てからの生活をするまでは工藤の家にいたのだから出来るだろうと。

そういった感情的な部分を抜いて理屈的に考えるなら、英理の言うことは間違っていないというかむしろその方がいいとすら思えるものではあった。だがそれで二人がはいそうしましょうとならなかったのは、英理や恭弥が自分達を遠ざけようとしている・・・もっと言うなら邪魔者を扱うような雰囲気を二人共に感じたからだ。蘭を工藤の家に押し込めて新一共々厄介払いをしているかのような雰囲気を。

だがそんな新一達が感じたことを踏まえた上で英理が自分もそうだが恭弥も大学を卒業して一社会人になることからどうしても忙しくなるだろう上で、ここにはいない小五郎も余裕があるわけではないのだから、蘭が工藤の家にただ気に入らないから住みたくないということは望まれないと言った上で、時間制限だとか是が非でも事態を解決しないといけない理由があるのならまだしも、そこまで切迫してる状態でないなら自分も嫌だという気持ちはあるのは確かではあるが、恭弥や小五郎の為にも自重だったり気遣いをしてほしい・・・と言われたことにさしもの二人も苦い顔を浮かばせた上で、少し考える素振りを見せた上でそうするというように答えた。

ここでワガママばかり言うようであればかけた時間の少なさはともかく、結果として自分達の子どもとして愛している恭弥の迷惑になると言われたこともあるが、二人にとって最大の枷になったのが小五郎という存在が出てきたことだった・・・もう今となっては小五郎と再び仲良くなることに関しては諦めに近い考えを持っている二人だが、それでも英理や恭弥の助けがないとなったなら新一も蘭も小五郎にそんな気持ちに構わず助けを求めていただろう可能性を言われて初めて自覚した上で、そんなことをやったらその瞬間に小五郎の不興をまた買ったのではないか・・・そういったことも考えてしまえば、ここで押し込められている事を承知で英理の言うことに従った方がいいと思ったが為に。









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