こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

「・・・今の話は僕の想像ではあるが、母さんの性格だとか考え方を思い直してみなよ。母さんがそんな人なのかそうでないかをさ」
「そっ・・・それ、は・・・」
そしてよそった量を食べ終わり何も言えずにいた新一に改めて蘭の事を考えてみるようにと恭弥が投げ掛けると、どもった声を漏らし視線をさ迷わせ出した様子を見せた事にまた恭弥は鍋の具を器によそっていく。






・・・そうして新一からして悩ましげな問い掛けにうつむいて悩む中で恭弥は黙々と鍋を食べ進めていくのだが、ようやく新一は顔を上げた。
「・・・恭弥・・・言われたことを考えていくと、お前の言う通りだとしか思えなくなった・・・蘭は確かに俺にずっと付いては来たけれど、今となって思えば蘭はそんな事件だとかを望んでた訳じゃないって事をな・・・」
「そう。で、納得したならどうするの?」
「え・・・?」
そうしてようやく言うことを呑み込めたというように新一は漏らすのだが、恭弥が大して興味を持った様子も見せずにどうすると問い掛けてきたことに戸惑いを浮かべた。
「そこから先さ。僕の言ったことに納得した・・・だからと言って僕の言うことが正しいかどうかという保証は出来ないのもそうだが、例え正しかったとしてもそうでなくても貴方がこれからどうするのかが貴方と母さんの関係についてを左右するだろう・・・そういったことを踏まえた上で貴方はどうしたいのかと聞いてるんだ。またそれまでのように母さんと活動したいのか、それとも貴方自身の事も含めて今までとは違うようにしたいのかとかをね」
「そ、それは・・・」
「僕から言えるのはここまでだ。後は貴方自身でどうしたいかを考えてね。この問題に関しては貴方と母さんの間で起きたことであって、どう貴方が母さんと向き合っていくかは僕が決めることじゃない。貴方がどうしたいかにどうするかだ・・・じゃあね、ご馳走になったよ」
「っ・・・!」
恭弥は選択をすることが蘭との関係について重要だと言うのだが、そこまで言うだけ言って場から立ち上がってあっさり部屋を後にしていく様に、新一は呼び止める事も出来ずにただその後ろ姿を複雑げに見詰める以外に出来なかった。新一としては恭弥にどうにか取り持ってもらおうと思っていたのに、アドバイスをされたというのを差し引いても自分でどうにかしろと見放されたも同然な事だと感じた為に・・・


















・・・そうして料亭を出て駐車場に止めていたバイクの前で恭弥は携帯を取り出し英理へと簡単に経緯をまとめたメールを送るのだが、少しして電話で話したいというメールが返ってきた事から了解の返事を返してすぐに電話があった為、実際にあったことの経緯を話した。



『・・・そう・・・新一君はそんなことを・・・』
「あの様子から今日や明日には突撃はしなくても、この一週間か二週間の内には母さんを訪ねてくる可能性は十分に有り得ると思いますが、約束も無しにそちらに突撃する可能性もまた大いに有り得ると思います。ですからそちらの都合もですが、母さんの様子次第では来るなら何時にというように約束してもらうべきです」
『そうするわ・・・こっちも仕事の事もあるけれど、いきなり新一君が来たら蘭がヒステリーになるのは目に見えているから・・・』
・・・それで一通り話をし終えた所で英理の浮かない声を受けた上で注意を恭弥は向けるのだが、やたらと疲れたような声が聞こえてきたことに眉を寄せる。









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