こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく

「・・・一応おばあ様から母さんがどんな理由で貴方の元から離れたのかについては聞いているよ。何でも話に聞いた感じではもういい加減今の暮らしを止めて家でゆっくりしようという母さんの言葉に対して、貴方は色々言いはしたけれど結局はそれを探偵として止めるつもりはないというように言った事で、母さんは貴方から離れていったのだとね」
「そ、それは・・・今までこの生活を続けてきたのに、何で今更って思ったのもあったからそう言ったんだけど・・・」
「貴方は今更という言葉を使ったが、今更と言うくらいにはもう貴方は家に戻らない生活に慣れすぎた上で、母さんはそんな生活に飽きたか落ち着きたいという気持ちを抱いたんだと思うよ。ただ・・・これだけ聞くなら貴方が悪いというように言われたかと思うかもしれないが、僕から言わせれば母さんは貴方とのそんな生活に不満を持ったというより、単純にハイになってた気持ちが切れたからというだけだと僕は思ってる」
「・・・ハイな気持ちが、切れた?」
それで恭弥が皿から口を離して新一に自身の考えを口にしていくのだが、その理由についてを聞いて新一は眉を寄せた。
「貴方は今の生活について不満だとか一切無いんだろう。探偵として必要とされて奔走していくその生活は・・・そしてそんな生活の中で母さんという貴方からして最愛の人と共に動くことで一層充実した気持ちがあったんだろうが、母さんは貴方とは違う。貴方と同じ探偵じゃないんだよ、あの人は」
「だ、だからって気持ちが切れたって、どういうことなんだよ・・・?」
「単純な話さ・・・貴方が好きだという気持ちだけでずっと貴方の活動に追従していくことが今になってキツくなっただけだと思ったってことだよ。僕が中学の頃に貴方と二人で動くことを決めた時は貴方と一緒ならいつまでも大丈夫だとか、優作のお爺様達のように自分も二人で動けると思ってきたんだろうと思うけれど、探偵として充実感を感じる貴方と違ってただ付いてきただけの母さんは色々と考える事があった上で、二人で動くと決めた頃の気持ちが薄れて切れていったんだろうとね」
「っ!?」
だが続けられた新一と蘭の二人の在り方の違いと、その気持ちの変遷を語る恭弥の言葉に新一は驚きの衝撃に目を見開いてしまった。だがそんな反応に恭弥はただ冷めたような瞳を向けた後にまた空いた器に鍋の具をよそって食べ進めていく。






・・・新一と蘭は未だに想いあっているのは間違ってはいないが、探偵として嬉々として動いている新一と別に探偵という職業に対して縁があるというだけで、別に探偵になる気もなければ謎も推理もさして好きでもなく、単純に事件に関わり解決の為に動く新一の様子が好きなだけの蘭・・・そんな二人というか蘭がいつまでも新一の自由に動くための生活にモチベーションが保つかどうかに関して、いつでもきっかけ次第でモチベーションは無くなる可能性は有り得ると恭弥は見ていた。新一が好きだという気持ちだけではどうにもならなくなる瞬間が訪れないとは言い切れないと。

そしてその結果がこうして蘭が新一の元を離れるという物になったわけだが、そうして新一が何故蘭が離れるのか分からないということもだがそれでどうにか蘭をなだめるようにと助けを求めてくる辺りに、いかに新一が蘭が自分といつでも一緒にいることが普通であり当然であることだと疑いを持たずにいたことが分かるだろう。









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