隣の芝が青いことの意味

「厄介だな・・・あの娘は毛利さんに無理をさせてでも二人を一緒にいさせたいと思っている。だが妃弁護士の様子を見る限りじゃとても言葉だけで納得してくれるとも思えない」
「それに二人の仲が戻ってほしいと言っているのに、蘭は自分の思う毛利さんの駄目な所を妃さんに情報として流してしまってる・・・そんなことされたら妃さんが復縁したいと思うどころか、毛利さんの立場が悪くなるだけじゃないか」
「カミーユが以前に言っていたが、悪意なく毛利さんの事を下に見ているからこそだろう・・・自分もそうだが妃弁護士の方が毛利さんよりも断然上だと」
・・・それであまり遅い時間になっても行けないと小五郎の元をおいとました後、家に向かう途中の路地で二人は先程の空気から一転して重く話をする。蘭の態度がいかな物かを。






・・・蘭が小五郎と英理が再び夫婦として一緒に仲むつまじく暮らすことを望んでいること自体は嘘ではないし、二人の事が好きなのも嘘ではないだろう。だがどっちが好きかと愛情に差をつけることは出来ないと言ったとしても、とちらが人間として立派か・・・そう問われた時に蘭が出す答えは十中八九、英理の方だと答えるだろう。

これは社会的な立場もそうだが、同性であることの贔屓目も大いに加わっている部分も大きい。小五郎は探偵という職業でコツコツと仕事はしているが日の目を見ることの少ない裏方の職業で、英理は弁護士でありその敏腕さで女王とまで呼ばれる程の華やかな実績を打ち立ててきている。どちらが社会的に見て立派な職業に実績を持っているのかと言えば弁護士の方だろう。

その上で同性が同性を庇う心理というものも大きい。極端なフェミニストで女性を立てる為に男はあるべきでそうでない男は見下すといったタイプの人種もいるが、基本的に同性か異性のどちらに肩入れしやすいかと言えば同情に同意がしやすいという意味で同性になりやすい。

そう言ったことからカミーユからすれば蘭は英理の方が小五郎より断然偉く正しいと考えていて、小五郎が英理の為に変わる形で動かねばならない・・・そう無意識に考えているように感じた。そして仲直りしてほしいと考えながらも一方で無意識に小五郎の事を扱き下ろしていることから、英理には小五郎の事が悪い方でしか物事が伝わっていないと。






「・・・やむを得ないな。毛利さんに多少心苦しい事をさせるようだが、蘭の状態の解決の為にも一つ提案してみよう」
「提案?何か考えがあるのか?」
それでルルーシュが少し苦い顔をしながら提案と切り出したことに、カミーユはどういった中身かと興味を示す。















・・・それから数日後、小五郎の家で夕食を作って待機していたルルーシュとカミーユ。
「・・・戻ったぞ」
「お疲れ様です、毛利さん。どうでしたか、結果は?」
「一応成功だ。高校に入ってからまず半年間は蘭は英理の元で暮らすことになった。まぁそう切り出した時に結構色々言われちまったから疲れたがな・・・」
「・・・お疲れ様です」
そこに戻ってきた小五郎を労いながら成果についてを聞くルルーシュに、小五郎が疲れの見える様子で返すとカミーユが心からの労いの言葉をかける。






・・・ルルーシュの提案。それは蘭に英理のもとに行ってしばらくの間暮らしてもらうよう、小五郎に二人に話をしてもらうというものである。

最初その提案を小五郎にした時にどういうことかと問われたルルーシュはこう返した。「お二人・・・少なくとも毛利さんは今の状態についてをまだ良しとしているかもしれないが、蘭はそうは思ってはいないでしょう。ですがそれを蘭にいくら言っても聞いてくれないというか、むしろ強情になって二人を元に戻そうと躍起になる姿が目に浮かびます。そういった事態を避けることもそうですが、二人の事がそう単純ではないことや妃さんの気持ちを蘭に知ってもらうためにも、妃さんの許可が出るなら一定期間妃さんと生活してもらった方がいい」と。

このルルーシュの言葉に小五郎は否定を返せず、唸るしか出来なかった。前より大分素直になったと小五郎は自覚はしてはいるが、英理の方はその限りではないし蘭に色々知ってもらった方がいいのではないかと考え。

そして少し考えて小五郎が出した結論は一度英理に蘭と話をしてみるというものであり、結果は多少の難はあったものの成功という物であった。









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