こだわり変えられない物に囚われ、様々な物がこぼれ落ちていく
・・・これは有り得た可能性の一つの話である・・・
「・・・頼む、恭弥・・・俺に協力してくれ・・・」
「・・・何だい、藪から棒に。というか今日ここには大学卒業の祝いをするから来てくれって言われたからなのに、いきなりそんなことを言われるとは思ってなかったんだけど」
・・・とある料亭の個室にて。
スーツに身を包んだ恭弥は襖を開けてそこに入り、鍋が既に置かれたテーブルの片側に座っていた新一の反対側に座るのだが、そこで開口一番切実な声と共に頭を下げる新一の姿に恭弥は隠しもしないように怪訝な顔と声を向ける。そもそも恭弥としては半ば無理矢理というか是が非でも会いたいから時間を取ってほしいと言われて来たのであって、その熱量から断る方が面倒だと思っただけで恭弥自身は来たいと思って来たわけではない為に。
「・・・実は、その・・・ちょっと蘭と喧嘩っていうか、俺の所から蘭が離れていったんだ・・・」
「あぁ、その事については英理のおばあ様から聞いてるよ。自分の所に蘭が来てる上で何か急用がない限りは来ない方がいいって連絡を受ける形でね」
「そ、そうなのか・・・」
新一はそんな様子に言いにくそうに蘭と何があったのかを切り出すのだが、恭弥が既に知っているとばかりに返した答えに呆気に取られたように漏らす。
・・・新一が蘭と離れていると意を決したように話し出した理由は、結婚して二十年以上になる中で初めてに近い形で蘭に飛び出されるような事をされたというのもそうだが、出来ることならそれを明かしたくはないと思っていたからだ。見栄やら見映えやらを気にする新一からしたなら人聞きの悪いことをわざわざ明かすのは出来る限りは避けたいことである。
だが既に恭弥はその事を知っていたと言われたことに何で知っているのかという考えがあったのもあるが、実は英理の元にいると初めて知ったという驚きもあったから呆気に取られたのである。
「どうやらおばあ様の元にいること自体を初めて知ったというようだね。まぁその理由に関しては大方分かるよ・・・僕から母さんへの取り成しを頼もうと思ったことからおばあ様達みたいに他の人に連絡を取ろうと思わなかったのと、仕事が忙しいからであまり時間を取れないから食事も兼ねて卒業祝いという名目で僕にその事を頼もうと思ったんだろうとね」
「そ、それは・・・」
「否定出来ないだろう?だって現に貴方は卒業祝いを名目に僕を呼び出したのに、真っ先に頼み事をしたいと頭を下げた。それってつまり貴方からして重要なのは母さんとの渡りを僕につけてもらう方だという証明に他ならないんだよ」
「ぅっ・・・!」
そんな新一の様子に呆れを隠すこと無く自身の推測を口にしていく恭弥に動揺を隠せないままに息を詰まらせる事しか出来なかった・・・事実、恭弥が口にしていった推測は一つたりとて間違いではなかった為に。
「・・・本来ならそんなことが分かった時点で僕も気分が良くないと退出するところだが、一応食事をするとの事でお腹を空かせてきたんだ。食事をするついでに貴方からして聞きたくないだろう事を話していくよ。どうせここでおさらばしてもその件でより面倒になるだろうことは想像がつくからね」
「えっ・・・?」
だが恭弥がそこで面倒くさそうにしながらも話をするために残ると口にしたことに、新一はどういうことか理解出来ずに不安げな顔と声を浮かばせるしかなかった。何か明らかに不穏な空気をはらんだ様子に。
・・・それで恭弥が慣れた様子で鍋に火をつけ、熱が通ったのを確認して具をよそい食べていく様子を新一はただ不安そうに見つめるしか出来ていなかったが、そんな様子のままで恭弥は口を開く。
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「・・・頼む、恭弥・・・俺に協力してくれ・・・」
「・・・何だい、藪から棒に。というか今日ここには大学卒業の祝いをするから来てくれって言われたからなのに、いきなりそんなことを言われるとは思ってなかったんだけど」
・・・とある料亭の個室にて。
スーツに身を包んだ恭弥は襖を開けてそこに入り、鍋が既に置かれたテーブルの片側に座っていた新一の反対側に座るのだが、そこで開口一番切実な声と共に頭を下げる新一の姿に恭弥は隠しもしないように怪訝な顔と声を向ける。そもそも恭弥としては半ば無理矢理というか是が非でも会いたいから時間を取ってほしいと言われて来たのであって、その熱量から断る方が面倒だと思っただけで恭弥自身は来たいと思って来たわけではない為に。
「・・・実は、その・・・ちょっと蘭と喧嘩っていうか、俺の所から蘭が離れていったんだ・・・」
「あぁ、その事については英理のおばあ様から聞いてるよ。自分の所に蘭が来てる上で何か急用がない限りは来ない方がいいって連絡を受ける形でね」
「そ、そうなのか・・・」
新一はそんな様子に言いにくそうに蘭と何があったのかを切り出すのだが、恭弥が既に知っているとばかりに返した答えに呆気に取られたように漏らす。
・・・新一が蘭と離れていると意を決したように話し出した理由は、結婚して二十年以上になる中で初めてに近い形で蘭に飛び出されるような事をされたというのもそうだが、出来ることならそれを明かしたくはないと思っていたからだ。見栄やら見映えやらを気にする新一からしたなら人聞きの悪いことをわざわざ明かすのは出来る限りは避けたいことである。
だが既に恭弥はその事を知っていたと言われたことに何で知っているのかという考えがあったのもあるが、実は英理の元にいると初めて知ったという驚きもあったから呆気に取られたのである。
「どうやらおばあ様の元にいること自体を初めて知ったというようだね。まぁその理由に関しては大方分かるよ・・・僕から母さんへの取り成しを頼もうと思ったことからおばあ様達みたいに他の人に連絡を取ろうと思わなかったのと、仕事が忙しいからであまり時間を取れないから食事も兼ねて卒業祝いという名目で僕にその事を頼もうと思ったんだろうとね」
「そ、それは・・・」
「否定出来ないだろう?だって現に貴方は卒業祝いを名目に僕を呼び出したのに、真っ先に頼み事をしたいと頭を下げた。それってつまり貴方からして重要なのは母さんとの渡りを僕につけてもらう方だという証明に他ならないんだよ」
「ぅっ・・・!」
そんな新一の様子に呆れを隠すこと無く自身の推測を口にしていく恭弥に動揺を隠せないままに息を詰まらせる事しか出来なかった・・・事実、恭弥が口にしていった推測は一つたりとて間違いではなかった為に。
「・・・本来ならそんなことが分かった時点で僕も気分が良くないと退出するところだが、一応食事をするとの事でお腹を空かせてきたんだ。食事をするついでに貴方からして聞きたくないだろう事を話していくよ。どうせここでおさらばしてもその件でより面倒になるだろうことは想像がつくからね」
「えっ・・・?」
だが恭弥がそこで面倒くさそうにしながらも話をするために残ると口にしたことに、新一はどういうことか理解出来ずに不安げな顔と声を浮かばせるしかなかった。何か明らかに不穏な空気をはらんだ様子に。
・・・それで恭弥が慣れた様子で鍋に火をつけ、熱が通ったのを確認して具をよそい食べていく様子を新一はただ不安そうに見つめるしか出来ていなかったが、そんな様子のままで恭弥は口を開く。
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