望むことばかりを望んできた末路

「あぁ。そしてその上でもう一つ言えることとして、人間でなければ銃を撃てるし殺せるという割り切りの良さだ。ただ一つ言えることとしてはその割り切りの良さがあまりにも良すぎないかと俺個人としては思わざるを得ないがな」
「そこに関しては私も同じね。一応というかアンブレラと対峙した際、ラクーンシティでの体験も交えてゾンビやバケモノ達と出会すことがあったなら躊躇わず銃で撃てと何度も何度も話したわ。特にゾンビに関しては人の姿をしているし一応はウィルスに感染しているだけで生きているということだけれど、もう人としての心なんて残っていないバケモノなんだから逃げるか殺すしかない・・・とね」
「それで、そう聞かされた時の反応とあの施設での後はどうだったんだ?」
「聞かされた時は本当にそこまでなのかというように信じられてない様子だったけれど、あの施設でまだ感染してない研究者が感染した研究者だったモノ達に助けられず喰われていく姿に嘘でも何でもなかったと、ようやく理解したというようになっていたわ・・・けれどその後で感染者とは言え人を殺したことに対してトラウマを抱いたのかと思っていたけれど、むしろこんなことを許せないみたいな義憤を燃やすような様子を見せていたことは正直信じられなかったわね。ラクーン事件の時より小規模だからなんて比較にしてはいけないけれど、それでもあの地獄を前にしたのに・・・と心底から思ったもの・・・」
「それはそう思うのも当然だろうな・・・」
ただそれだけが理由ではないと新一の割り切りの良さとレオンは言うのだが、アリッサが施設での前後での新一の様子を疲れたように漏らす様に何とも言えない声で同意するしかなかった。あまりにも新一の反応は二人からして有り得ないといった様子に。






・・・Tウィルスに感染したゾンビはホラー映画でよく出てくるような蘇った死者ではなく、倫理観や思考がTウィルスにより犯されて主にウィルスに感染していない生物を食らうための食欲を満たす欲求を果たすことが目的となる、いわば言葉や意志疎通が果たせなくなった獣のような存在であって一応カテゴリーとしてはまだ生き物という部類にある。その事についてはアリッサもアンブレラを調べていく中で知っていくことになったし、レオンも苦い想いをしながらもかつてラクーン事件で先輩となる筈だった存在が人間としてではなく、もう人間には戻れないゾンビと変わる瞬間に立ち会うことになってしまった。

そんなゾンビについての詳細を新一に話してもしアンブレラを追う際に何らかから対峙することになったら、躊躇わずに殺すようにとアリッサは何度も話してきた。それが出来ないなら本当の意味でのアンブレラというかラクーンシティで起きたような事態と対峙したなら死ぬ以外にないからと、銃を常に携帯しないなら協力関係は破棄するという条件も追加した上でだ。

この銃を常に携帯ということに関しては新一はそんなもの探偵として持ちたくないと最初は嫌がりはしたが、日本と違いアメリカや他国では銃を持つことはそこまで珍しくないからアンブレラに関わらず凶悪犯罪が関わる際のもしもの予防の為というのと共に・・・自分の話を大袈裟や誇張されたものだとか自分なら銃なんて無くてもアンブレラとのやりあうのは大丈夫なんて思うようなら、そんな安穏とした存在と組むのなんかいくら金を払われてもゴメンだと鬼気迫る様子で返して新一にプレッシャーを与える形で銃を持たせる事にした。

そうまでしてアリッサが新一に銃を持たせたのはその思い上がりをただしもせず、見殺しにする程冷血ではないからだ。むしろラクーン事件でバイオハザードを経験したからこそ、自ら危険に飛び込むのは仕方無いにしてもせめて生存確率を少しでも上げてやろうと思っての優しさであった。ただ新一に対しては優しい顔を見せたら軽く見られる事は分かっていたため、厳しい顔で散々言ったのである。ほとんど無いにしても新一が引いてくれればいいという些末な期待も込めてだ。










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