隣の芝が青いことの意味

・・・自分達が異質であることを知る二人の子どもは異郷の地で二人で過ごすことが多かった。別に異郷に慣れなかった訳でも、そこの子ども達と仲良くなれなかったからというわけではない。ただ自分達が異質であるからこそ、普通の環境に入ることに躊躇いがあったからだ。
「おうどうした、ガキども?」
・・・そんな二人の子どもに声をかけてきたのはどこにでもいそうなありふれたおじさんだったが、そのおじさん・・・毛利小五郎との出会いにより、二人は知ることになる。自分達の親からは得られなかった、普通の親がどのような存在であるかにその温もりを。


















「・・・戻ったぞ~」
「あぁ、お帰りなさい毛利さん。食事出来てますよ」
「おう、いつも悪いなルルーシュ」
「いえ、二人分も三人分も一緒ですからね。もうすぐカミーユも戻ってくると言っていましたが、先に食べてていいですよ」
「そろそろ戻ってくるってんならそれくらい待つよ。一人だけ先に食うってのもあんまり良かねぇと思うしよ」
「えぇ、分かりました」
・・・小五郎が自分の探偵事務所の上にある家に戻ると、そこには学ランの上にエプロンを付けたルルーシュがいた。
そんな光景にいつものことといったように話をしていく二人だが、ふと二人は小五郎が入ってきた方向に視線を向ける。
「あ・・・もしかして待たせてたか?」
「いや、ちょうど毛利さんが戻ってきたところだ。ご飯は出来ているから用意をして食べよう」
「あぁ、そうするか」
「となりゃ食器だとかの準備準備っと・・・」
そこに現れたのは同じく学ラン姿のカミーユでルルーシュと和やかに会話をし、小五郎も食事が出来るようにと楽し気に動き始める。






・・・ルルーシュとカミーユ。二人は別に小五郎の子どもというわけではない。きっかけは数年前に他国から日本に来て、二人が公園で会話をしている時に小五郎が話し掛けた事からだ。

小五郎が話を聞けばルルーシュはカミーユとその両親と一緒に日本に来たが、両親は基本的に仲が悪い上に仕事に熱中して家庭を省みないことから家に戻ってくることなどほとんどなく、家にいても外にいても一緒だからと公園で時間を潰していたとのことである。

そこから食事だとかはどうしているのかも聞いたりしたが、食費だとか雑貨など色々な物を買う分の資金は十分に渡されているという答えに小五郎はその親達に対して怒りを覚えた。ルルーシュという子どもを預かっている事もあるのに、そんな育児放棄のような事をやれることに。

ただそうして小五郎が怒ることに二人は戸惑いを見せた上で両親が今更心変わりをするなど有り得ないし、変に両親が言い争いをするようなきっかけを作ると離婚のきっかけが出来た上でルルーシュが望んでもない帰国をするはめになりかねない・・・そう言ったことで小五郎も両親に対して何かを言うことを止めたのだが、その代わりに小五郎は何かあれば力になるからと自分の連絡先を書いた名刺を手渡した・・・そこから小五郎はルルーシュとカミーユの二人との交流が始まったのだ。






「・・・なぁ、本当に国に帰らずにこっちで暮らす気なのか?今更だけどよ・・・」
「俺は元々国に未練はありませんし、こっちでの知り合いも多く出来ました。親父にお袋は仕事さえ出来ればいい人ですから多分呼び戻されればすぐに戻るとは思いますが、俺はもう二人に付いていくつもりはありません。それに俺がいない方が二人も気が楽でしょうしね」
「俺もそんなつもりはありません。妹のナナリーへの気持ちはありますが、父親と母親への気持ちはありませんからね」
「・・・ほんと、お前ら親に対して厳しいな・・・」
・・・それで食事も終わり一段落した所で小五郎は帰らないのかと問うが、二人揃って一切迷いのない様子に頬をひくつかせる。









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