望むことばかりを望んできた末路

「・・・これで、元に戻れたんだな俺・・・!」
「・・・その割には怒り心頭というか、納得いっていないという顔ね」
・・・とある部屋の一室にて。
部屋の中心で組織のせいで体を小さくされていた新一は解毒薬を飲んで元の体に戻ったことを確認するよう手を握り開きとしているが、その表情の険しさに端から見ていて赤井を隣につけた灰原は呆れたような様子を見せていた。
「それはそうだろ・・・確かに早く元の体に戻りてぇとは思っちゃいたが、こんな感じで戻りたいなんて思ってなかったんだよ・・・色々な意味でな・・・!」
「・・・言いたいことは分からないでもないわ。私もまさかあんな形で組織の事が明らかにされるなんて思ってなかったし、その被害が決して無視出来ないだけの物であることに関してはどうかとは思うから」
そんな灰原に怒りを覚えざるを得ないというように新一は返していき、灰原も一見似たような気持ちや考えはあると言葉面は返すが・・・その表情や言い方にはどこかしらに新一に対する冷たさがあって、新一当人は怒りの為かそれに気付いた素振りはなかった。
「落ち着け新一・・・確かに私もどうかという気持ちはあるのは否定しないが、その感情のままにアンブレラを追うかどうかに関しては私は勧められない。この事に関しては冷静になってちゃんと考えるべきだ」
「父さん・・・」
そんな時に灰原とは逆側にいて有希子を隣につけた優作からの言葉に、少し困惑した様子を浮かべる。
「優作氏の言う通りだ、ボウヤ。今までの君の活動に関してはおおまかに聞いてはいるが、今は君の体が元に戻ったことから海外へと向かいアンブレラの事を探ろうとすることも出来なくはないだろう・・・しかしアンブレラは組織と違い表立った立場としてアメリカでも一概に無視が出来ない程の大企業であると共に、奴らに抱き込まれている弁護士団や議員といった人物達も少なくないとFBIの上層部は見ている。君としてはそんな奴らをどうにかしたいという気持ちになるのは分からないとは言わんが、仮にも大企業であるアンブレラをどうにかするなんてことはとても一朝一夕に出来ることではないし、奴らもどうにか潰されまいと組織の事を形振り構わず明かしたような形の抵抗をしてくるだろう。そう考えれば今なら元の生活に戻ることが出来る高校を退学することは勿論ではあるが、主な拠点がアメリカやヨーロッパとなる奴らを探るために日本を長期間離れた上で、アンブレラについてが一段落するまで日本に戻らないようにするのは避けられんだろうな」
「なっ・・・!?」
だがここで更に赤井が優作に同意しつつ告げてきたアンブレラを追うならこうするべきとの言葉達に、絶句といった表情と声を漏らした。
「・・・これに関しては組織と比べてもアンブレラが厄介という可能性が高いというのもあるが、やはり企業としての規模が規模だというのとこの日本にアンブレラの支部すら存在しないという二つが大きな理由だ。特に支部すらないという場所柄を考えれば日本で何らかの活動なんてものが意味を為すと思うかな?」
「そ、それは・・・で、でも高校を辞めてとか日本に戻るなとまでってのは流石に言い過ぎなんじゃ・・・」
「少なくとも君の高校の進級に関しては現実的に見るなら決して大袈裟ではない問題と言えるからこう言っている。君が小さくされてからこうして元の体に戻るまでにそれなりの時間がかかることになったのは経緯から聞いているが、今高校に復学すれば進級することは出来んことはないと言えるくらいかもしれん・・・だがアメリカにヨーロッパと世界規模で支部があるアンブレラをどうにかしたいというにしても、奴らもラクーン事件の事があったことから決して簡単には尻尾を見せてはくれんだろうから時間はそれなりにかかるのは目に見えているし、君の事を邪魔に思えば君を始末に取り掛かろうとしてくる可能性は大いに有り得るだろうことや、一度や二度それらを退けた程度では奴らは諦めてはくれんだろう上で・・・事あるごとに日本に頻繁に帰るような事をしていれば、奴らが君をターゲットにして日本で形振り構わない行動に出る可能性を俺は否定は出来ん」
「っ!・・・だから奴らを追うならもういっそ進級を諦めるとかじゃなく学校自体を辞めて、尚且つ日本に戻ることなくいた方がいいってのか・・・」
「そういうことだ」
だが赤井が続けたいかな問題があるかについての羅列を聞かされて、新一はたまらず苦い顔を浮かべて歯噛みするしかなかった。特に目下の問題としての進級についてを挙げられた事で、アンブレラを追うと決めたなら退学はないにしても留年はまず免れない程の時間は使うだろうとのことに。










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