舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

「というわけですから私の方は心配いりませんし、むしろそう聞かせてもらえて一層気持ちが奮い立ちましたから大丈夫ですよ」
「・・・気持ちが奮い立つ?」
だが蘭が喜色を強めて奮い立つと口にしたことに荒垣は訳が分からないと眉を寄せるが、構わないとばかりに蘭は笑みを深めた・・・荒垣の事を荒々しく傷付けるだとか無理矢理みたいな気持ちまではないが、絶対に落として見せるという決意を込めながら・・・


















・・・そうして数ヶ月という時間が経つのだが、結果から言うなら荒垣は蘭の想いが実る形で蘭と恋人という関係になることになった。これは蘭自身が荒垣に猛烈にアプローチしたこともあるが、元々から協力することに乗り気だった園子や荒垣が考えていたことを蘭から聞かされて荒垣なら蘭を任せてもいいと小五郎が認めたことに、園子から話が回ってきた美鶴達もそういうことなら後押しをするということで荒垣の外堀を埋めていったからである。

そんな周りの後押しに最初は荒垣は困惑してどうにか型にはめられないようにしようと思って動こうとしていたが、そこは美鶴達の言葉により荒垣が自身の中の気持ちに気付いた事で蘭と付き合うことにしたのである。何だかんだ蘭達を見捨てられず一人でも動くと決めたのは良心の呵責もあったんだろうが、蘭に対しての気持ちもあったから動いたのだろう・・・といった言葉でだ。荒垣自身もそこでようやく自身の中の気持ちに気付いたのである。

故に二人はそこから付き合い出すことになるのだが、その事実を前にして衝撃を受けたのは阿笠から連絡を受けた新一であった・・・一応完全に縁は切れてないことや同じ米花町で暮らしていることから阿笠は顔を合わせない訳ではなかった。そして新一や優作達と違って阿笠は米花町の自身の家から離れる事なく生活していたことから、度々荒垣達の事を新一達の為にもと偶然出会える所を歩くだとか買い物をするなりで蘭達の様子を見て報告するためにと動いていた・・・そしてその結果として二人が明らかに恋人として付き合う姿を目撃して新一に連絡をすれば、衝撃を受けざるを得なかったのである。その時には新一はようやく自身を小さくした男達を捕まえること及び、奇跡的に元の体に戻る為の薬を飲んでいざ帰って蘭達との仲を元に戻そうと意気込んでいた時だったのもありだ。

だがそれでそこで二人が付き合っていると聞いてはい終わりなんて諦めのいい性格ではない新一は、体が元に戻った事に駆け付けてくれた優作達二人と共に探偵事務所を訪れる事にしたのだが・・・出迎えた蘭と小五郎から返ってきた言葉は元に戻れたことは良かったとは言わせてもらうが、もう積極的に関係を持つ気はないから帰ってくれと冷めた瞳と声からの物であった。

ただ最初はそうは言われてもと三人は食い下がろうとした。特に新一は荒垣と付き合ってるなんて嘘だろうと言いつつも、あの時あぁならなければ告白するつもりだったし今でもその気持ちは変わってないんだと言ったのだが・・・蘭が荒垣さんと付き合ってるからというのもそうだけど、前に言ったようにもう気持ちは無くなってるから断る以外にないとキッパリ返したことで、特に新一は衝撃を受けてすごすごと帰っていくしかなかった。優作達も優作達で小五郎に前の事もだが今回こうしてわざわざ触れないようにしようとしていたのに、新一が元に戻った経緯を話して許してもらおうという魂胆を感じて追い払われたのもあってだ。






・・・そうして『工藤新一』は帝丹高校に戻ることになるのだが、その時には荒垣と蘭の関係は荒垣の普段の雰囲気がよく知らない人物達からしたら近付きがたい物である為、大っぴらに言われることはなかったがそれでもちゃんと新一は蘭にフラれたというように見られることになった。戻ってきてから蘭に頻繁に話し掛けようとして以前と違い距離感が明らかに遠くなっている様子を度々見られているのもあってだ。

しかし同じ高校に通う中で唯一事情を把握している園子はそうなって当然だと事実を隠しつつ思うと同時に、蘭と荒垣の二人の付き合う様子を微笑ましげに見守っていった。新一と付き合う付き合わないくらいのような惚気話をされることはなくなったが、新一に絡まず事件に出会さなくなったからこそ穏やかな様子で時間を過ごしていく二人の様子を・・・









END









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