舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

「・・・あれに関しちゃ極端な例だから何とも言えねぇ部分もあるが、それでも工藤と一緒にいることで起きる事件に巻き込まれる事は時間が経てば経つだけ日常になっていっただろう。だがそれは工藤から離れて生活して事件なんてもんに縁遠い生活をしていた俺から見たら、そんなものを日常と思うのはおかしいとしか思えなかった。工藤は決して自分が事件を呼び寄せている訳ではないと言っちゃいたが、工藤からすりゃ小さくなる前も含めて事件やトラブルが周りに起きることこそが周りも思う日常であり・・・そこに巻き込まれた毛利達も日常だって思った上で自分が事件を解決するし、何かあっても最悪蘭なら空手で撃退出来るからいいだろうというような考えがあるから安穏としていると共に、心のどこかで推理が出来て事件に出会えることを喜んでんだろ。自分という探偵が活躍出来る心の踊る時が来たとでもな」
「・・・だから新一はそうして探偵として活躍出来るような事件が起きない方がおかしいって何処かで思って、荒垣さんはそういった新一から離れて色々考えたからこそそんな新一から私達を離したかったって事なんですね・・・」
「あぁ、そうなるが・・・それをここに進学してきた当初くらいに毛利に言っていたら、当時の毛利は聞く耳を持っていたとは思えなかった。何だかんだで今までの付き合いがあったのもそうだが、毛利自身が言っていたから敢えて言うが・・・工藤への好意が見えていたことからな」
「っ・・・そう言われると、その時にそうしなかったなんて言わなかったとは言えないと思います・・・当時の私だと新一と一緒にいることの何が駄目なんだって言ってたと今なら思えますから・・・」
そうして一応といったように注釈をつけつつも言わなかった理由を話していく荒垣に、蘭は確かに昔に言われていたなら受け入れていなかったと複雑そうに漏らすのを見て首を横に振る。
「・・・何だかんだ言いはしたが、俺がこういったように工藤の事を外から見たらどうかというように考えてもらうまでってのもそうだが、こうして毛利から聞かれなかったら何も言おうと思ってなかったのは事実だ。それが目的の為とは言え工藤と同じようにズルい事をしたという自覚は十分にある・・・だから俺のおかげだなんて風には言わなくていい。むしろ今更こんなことを言うなと言われる方が真っ当な反応だとすら俺は思ってるからよ」
「・・・それは違います、荒垣さん。確かに荒垣さんはうまく事を進めるためにって私達にそういったことを言わないようにしてたんだと思いますけれど、そういった理由なら聞いてむしろ納得しましたし新一とは違うと思います・・・新一は色々言いはしたけれど結局は自分がこうしたかったって言うだけで悪いことをしたみたいにはほとんど認めようとはしなかったけれど、荒垣さんは私達の為だって思った上で話として言わなきゃってことで謝ってくれました。そして今話を聞いて、私は荒垣さんに対して怒ってないですし何ならむしろ感謝もしてるんです・・・そういう風に私達の為にって思って動いてくれてありがとうございますって」
「・・・そう言ってくれて少しは気が楽になったよ」
荒垣は自分もズルい部分があったから・・・と自身の考えについてを正直に明かしていくのだが、蘭が却って聞けてよかったといった晴れやかな笑顔を浮かべて返した事にそっとうつむきながら微笑を浮かべた。許されたという事実を前にして。









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