舞い戻った一つの仮面により感情は移ろう

「・・・というわけでお父さんからは荒垣さんに礼を言っといてくれって言われました。何も言われないままだったらまず間違いなく優作さん達は行動を起こしてただろうから、あぁ言ってくれて助かったって」
「それはいいが、そうしてもう工藤の事を助けるつもりがない笑顔を見てると、俺がここに通う前のお前から考えてみりゃ有り得ねぇと思うな。当時の毛利なら毛利さんに食って掛かって協力しろと言ってただろうからよ」
「あはは・・・そう言われると否定出来ませんけど、そういうようになったのは荒垣さんのおかげですよ」
「俺が?」
・・・それで適当な空き教室で他に誰もいない中で話をしていた二人。
蘭から話が終わり荒垣は軽く礼を受け取りつつ話題を蘭が変わったというように変えるが、苦笑したように自分が理由と言われて軽く目を見開く。
「荒垣さんが言ってたように昔の私だったら何だかんだで最終的に新一に協力するって言ってたと思いますし、お父さんも同じように色々言ってもそんな感じになったと思います。でもそれも荒垣さんの言葉があったから私達は新一達に協力する事は良くないって思えるようになったんです。だから今は荒垣さんがこっちに戻ってきてくれて良かったって思うんです・・・多分とかそんな感じじゃなく、荒垣さんがいなかったら新一達を助けるとかそうするのが当然だって疑うことなんてなくそうしてたと思いますから」
「・・・そういうように言ってくれること自体は構わねぇ、と言いたいところだが・・・今だから言うが、俺は単に善意やらで今までの話やら行動をしていた訳じゃねぇ。俺からすりゃお前や毛利さんに工藤に対しての考えを変えてもらいてぇと思いながら帝丹高校に来ると選んだんだからな」
「えっ・・・そうだったんですか・・・?」
「あぁ、今更になってこんなことを言うなと言われそうだがな」
蘭はそんな荒垣へと自身の気持ちの変遷を嬉しそうに語っていくのだが、それこそが目的だったと返して目を丸くする様子に真剣に返していく。
「そもそもを言えば俺もだが美鶴達も工藤がやけに事件に出会しやすい上で、それを認めようとしないクセに事件と向き合えることをウンザリといったような様子を見せねぇでいたあいつの姿に、中学高校とこれからも付き合うなんてやってられるかとわざわざ別の高校を選んだんだ」
「えっ・・・それってつまり中学に上がる頃から荒垣さん達は皆、新一の事をどうかと思ってたんですか・・・?」
「そうなる、が・・・時々鈴木から聞くだとか工藤の評判が聞こえてくる度に思うようになっていった・・・何も言わずに離れるように動くと決めたのに付いていったのは確かだが、それでお前達が工藤のやり方に染まる生き方をしていくのを放っておいていいのかとな」
「それは・・・荒垣さんはその時に新一と仲良くしていくことは私達にとって良くないと思ったんですか?」
「あぁ・・・あんな風に体が小さくなっちまうなんて事態はそもそも想像すらしちゃいなかったが、それでもあぁいったような人を平気で巻き込んでおきながら最終的に失ったものは自分やお前らには何もなかったから良かっただろう・・・というように終わり良ければすべて良しと言わんばかりの態度を取りかねないと俺は見ていた。だがそういったように言いつつもこの前のように工藤が満足してるだけで、実際は周りが損をするだとか後始末やらは自分がやらねぇみたいな事態になるんじゃねぇかとな」
「っ・・・そう言われると、荒垣さんがいなかったら本当にその後ってどうなったかって考えるとヒヤヒヤします・・・お父さんや私がどうなってたかって考えると・・・」
そこから荒垣が自分が蘭達に対して考えを変えて欲しいという打算があったから来たのだと明かすのだが、この前の事を出されたことに蘭も確かにまずいと思えたと表情を険しくさせながらも頷いた。新一の考え方や行動に巻き込まれた場合のヤバさを今は確かと感じて。









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